
2024年には国内の出生率が初めて70万人を下回ると予想され、新卒採用の獲得競争は年々激しさを増しています。特に“売り手市場”と呼ばれる昨今、新卒採用のためにさまざまな手を尽くしている企業は少なくありませんが、採用の際に考えなくてはいけないのがコストの面です。
今回は新卒採用にかかるコストがいくらなのか、さらには国内での採用単価の相場やコストの削減方法についても解説します。費用対効果の高い採用戦略を立てるためにも、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
新卒採用にかかるコストはいくら?
就活みらい研究所が発表した「就職白書2020」によると、2020年卒の新卒採用にかかったコストの平均は1人あたり93.6万円という結果が出されました。
もちろんコロナ以前の調査結果ですが、平均採用コストは年々上昇傾向にあるため、近年は100万円を超えている可能性も十分に考えられます。
また、マイナビが発表した「2023年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」を見てみると、企業が採用全体にかけた費用は1社あたり平均約298.7万円という結果が出ています。ただ、上場企業で約771.9万円、非上場企業で約267.4万円となっているため、企業規模によって大きな開きがあることも把握しておきましょう。
参考:マイナビ|新卒採用の予算について
新卒・中途の採用コスト比較
新卒は1人あたり93.6万円と紹介しましたが、中途の場合はどれくらいのコストがかかるのかご存知でしょうか。「就職白書2020」によると、中途1人あたりの採用コストは平均で103.3万円という調査結果が出ています。
新規プロジェクトの立ち上げや人材の補填など、即戦力が求められる状況では新卒採用よりも中途採用のほうが適しているケースも少なくありません。新卒採用よりも10万円ほど高くなってしまいますが、育成にかかるコストを抑えられ、欲しい人材をピンポイントで採用できるのは、中途採用ならではのメリットでしょう。
新卒採用のコストは内部・外部に分けられる
新卒採用にかかる主なコストとして、以下のものが挙げられます。
- 採用計画、広告費
- 採用活動費(イベントや説明会など)
- 面接、選考費
- 内定者フォロー費
- 研修コスト
上記は基本的なコストですが、さらに細かく見ていくとコストはさらに大きなものだと理解できます。具体的にどういったことにコストがかかるのか、内部コスト・外部コストの2つに分けて確認していきましょう。
新卒採用の内部コスト
まずは新卒採用の内部コストを見てみましょう。以下の表にまとめたように、内部コストは採用活動にかかる人件費をはじめ、交通費や郵送費などの社内で消化される費用を指しています。
内訳例 | |
人件費 | 採用担当者の面接や説明会などにかかる費用 |
交通費 | 面接や説明会などにかかる費用。内定者へ支払うこともある |
宿泊費 | 面接や説明会などにかかる費用 |
交際費 | 内定者懇親会や研修などにかかる費用 |
その他 | リファラル採用にかかるインセンティブ(約80万円~/人) など |
面接回数が多くなったり、内定辞退者が出て再募集が必要になったりすると、採用担当者の工数が増えて内部コストが膨らんでしまうかもしれません。内部コストがかかり過ぎている場合は、選考フローや採用手法を見直すことも検討しましょう。
ただ、人件費は担当者の給与に含まれるケースもあり、部分的に計上することが困難です。概算を把握したい場合は、「採用担当者が採用業務に費やした時間」と「年収」をもとに、時給換算するのも一つの手です。
新卒採用の外部コスト
続いては、外部コストについて解説します。外部コストは、求人広告の掲載費やシステム導入費といった社外に支払われる費用を指しています。以下の表に外部コストの主な例をまとめたので、それぞれ確認しておきましょう。
内訳例 | |
掲載費 | 求人メディアへの掲載や登録などにかかる費用 |
システム導入費 | 採用管理システムやテストシステムなどの導入費 |
サービス利用料 | 人材採用サービスにかかる費用 |
広告宣伝費 | 会社案内やパンフレット、採用HP、PR動画などにかかる費用 |
会場費 | 会社説明会やセミナー、研修などの費用(約50万円~) |
外部コストは内部コストよりも費用がかかりやすいため、採用コストを見直す際はよく精査する必要があります。ただ、採用コストを抑えるために掲載費やサービス利用料などを削ると、就活生へのアプローチができず、応募者を十分に集められないかもしれません。
採用コストを抑えたい場合は、内部コスト・外部コストをそれぞれ計上したうえで削減方法を検討するのがおすすめです。
新卒の採用単価の算出方法
2020年の新卒採用は1人あたり93.6万円が平均ですが、自社の採用単価はどれほどなのか気になる方もいるでしょう。採用単価は、内部コスト・外部コストと採用人数を把握することで算出できます。
例えば、求人メディアへの掲載費や内定者懇親会の開催などに200万円を使い、5名の就活生を採用することになった場合の採用単価は以下の通りです。
200万円(採用コストの総額)÷5人(採用人数)=40万円
もしも、採用予定が5人にもかかわらず、内定辞退により2人しか採用できなかった場合、採用単価は100万円となります。
効果的な採用活動が行われていたかどうかを評価するには、採用コストよりも採用単価のほうが重視されます。採用単価を把握することは、今後の採用活動の予算や計画立案にもつながるため、定期的に確認しておくのがおすすめです。
新卒採用のコストが高くなってしまう3つの原因
新卒の採用コストは、企業の求める人物像や企業規模などによって異なりますが、必要以上にコストがかかってしまうことも珍しくありません。
ここでは、新卒の採用コストが高くなってしまう原因として、よくあるものを3つ紹介します。
1.適切な採用手法を取っていない
採用コストが高くなっている原因の一つに、企業に合った採用手法をとっていない可能性が考えられます。というのも、自社に合った採用手法を選ばないと、コストをかけても期待する成果が得られないケースもあるためです。
例えば、求人メディアに掲載しても、自社の求める人物像に合致した人材が集まらず、「応募が来ない」「歩留まりが低い」といった事態になりかねません。また、採用活動にかける期間が長引くと、人件費をはじめとする内部コストがかさんでしまいます。
内部コストは把握しづらい部分ではありますが、自社に合った採用手法を取らなければ、内部・外部のコストが膨らんでしまうことを把握しておきましょう。
2.ミスマッチの人材を採用している
採用コストが高くなっていると「母集団形成に原因があるのでは?」と考える人は少なくありません。もちろん母集団形成が要因の一つになることもありますが、ミスマッチの人材に内定を出している場合も採用コストが高くなります。
また、選考においてもミスマッチが原因で途中辞退されてしまうと、採用コストが上がってしまいます。ミスマッチが生じたために選考辞退されたり、入社後に早期離職されたりすると、採用活動をやり直す必要があるためです。
採用のミスマッチは企業・学生の双方にとってメリットがないため、採用活動のなかで特に注意する必要があります。
3.採用活動の長期化
採用活動の期間が長くなるほどに採用コストは膨らんでしまいます。採用のプロセスは企業によって異なりますが、面接の回数が多かったり時間が長くなったりしていると、採用担当者の人件費などが増加してしまうでしょう。
また、コストを抑えるために短期集中の採用手法を取った場合も、企業に合ったものでなければ採用活動が長引いてしまい、最終的な採用コストは高くなってしまうかもしれません。
採用活動の長期化は、採用担当者の人件費だけでなく、広報施策の追加などによって費用がかさむ可能性があります。そのため、長期的な視点で採用計画を立て、適切な予算を組むことが重要です。
新卒採用コストを抑えるためのポイント
新卒の採用コストはさまざまな原因から膨らんでしまう可能性がありますが、どういったことをすれば費用を抑えつつ効果的な採用活動を行えるのでしょうか。
ここからは、新卒採用にかかるコストを抑えるための方法として、7つのポイントを紹介します。
- 自社に合った採用手法を使う
- 自社の採用ページを活用する
- 選考プロセスを見直す
- 過去の採用コストを分析し無駄を省く
- 面接のオンライン化
- 採用のミスマッチをなくす
- 離職率を下げる
自社の抱える課題に当てはまるものがあれば、ぜひ実践してみてください。
自社に合った採用手法を使う
新卒の採用コストを抑えたい場合は、採用手法を見直してみましょう。近年は採用の多様化も進んでおり、求人広告をはじめとする従来の方法よりも、リファラル採用やソーシャルリクルーティングのほうが効果的な場合もあります。
ここでは、企業の採用コスト削減につながる3つの採用手法を見ていきましょう。
リファラル採用の活用
リファラル採用は、採用条件にマッチする人材を社員に紹介してもらう採用手法です。もともとはアメリカのIT企業から広まった採用手法で、外部コストの削減につながる可能性があります。
リファラル採用は、候補者に対して仕事内容や社風、ビジョンなどを事前に伝えられるため、ミスマッチが生じにくいのが特徴です。
コスト面ではインセンティブが発生しますが、求人広告にかかる手間や費用などを考えると、採用担当者の負担軽減や採用単価の削減が期待できます。
ダイレクトリクルーティングサービスの利用
ダイレクトリクルーティングサービスは「攻めの採用」とも呼ばれており、企業から就活生へ直接アプローチできるのが特徴です。求める人物像に合致した人材へピンポイントでアプローチできるため、効率良く採用活動を進められます。
ダイレクトリクルーティングサービスを提供している企業は多くありますが、新卒採用に特化しているのがキミスカです。2023年2月時点で83万人以上の学生が登録しており、3種類のスカウト方法により企業の熱意を学生へスムーズに伝えられます。
また、代行オプションにより採用担当者の負担軽減もできるため、採用活動の効率化も図れるでしょう。採用のミスマッチを減らし、効果的な採用活動を叶えたい場合は、ぜひキミスカを活用してみてください。
ソーシャルリクルーティングの実施
近年は採用手法の一つとして、ソーシャルリクルーティングを行っている企業も増えてきました。ソーシャルリクルーティングとは、XやFacebook、InstagramといったSNSを活用した採用方法のこと。
従業員がSNS運用を行うことで、求人広告のような外部コストがかからないため、採用コストを大幅に抑えることが可能です。また、企業の特徴や魅力を十に発信できるため、就活生だけでなく幅広い層にアプローチできます。
ソーシャルリクルーティングは求職者と気軽にコミュニケーションが取れる一方で、効果が出るまでに時間がかかることも珍しくありません。また、定期的に投稿したりSNS運用のノウハウが必要だったりするため、知識・経験を積み重ねていくことが重要です。
自社の採用ページを活用する
採用コストを抑えたい場合は、自社の採用ページを運用・強化するのも一つの手です。自社サイトの採用ページ経由で応募を集められれば、求人広告にかける費用や就活イベントへの参加費といった外部コストを削減できます。
もちろん、新たに採用ページを作るために外注する場合は、コストがかかることもあるでしょう。しかし、自社の採用ページを活用すれば、社員インタビューや具体的な業務内容などのコンテンツを載せられるため、ミスマッチの防止にもつながります。
また、キャリタス就活が発表した「2025年卒 採用ホームページに関する調査」によると、企業研究に役立った情報源として「個別企業のホームページ」と答えた学生が最も多くいました。このことから、採用ページをはじめ自社サイトのコンテンツを充実させることが望ましいでしょう。
選考プロセスを見直す
採用コストのうち、内部コストを削減したい場合は選考プロセスを見直してみましょう。例えば、面接の回数は3回が一般的ですが、ミスマッチを防ぐために何度も面接を行ったり面接が長時間に及んだりすると、人件費が膨らんでしまいます。
また、選考プロセスが長引くことでも採用コストが増加します。そこで、会社説明会をオンラインで実施したり、面接回数を減らすために効率的な評価基準を設けたりと、プロセスの見直しと同時に採用期間の短縮方法を考えてみましょう。
過去の採用コストを分析し無駄を省く
企業によっては、「採用コストのどこを削ればいいのか分からない」というケースもあるでしょう。そのような場合は、過去の採用コストを洗い出して分析し、無駄を省くための施策を検討するのがおすすめです。
過去の採用コストをまとめる際は、内部コスト・外部コストのそれぞれに細かく分類して整理していきましょう。そして、採用手法ごとの費用対効果を分析し、成果の出ていないものがあれば削減あるいは変更をします。
また、採用担当者の人件費が膨らんでいる場合は、システムの導入や外部サービスの活用も検討してみてください。場合によっては、採用業務の一部を外部に発注することで採用担当者の負担が減り、採用活動の効率化を図れる可能性もあります。
面接のオンライン化
面接をオンラインで実施することで、採用コストを抑えられる場合もあります。企業によっては面接を行うために会場を借りることもありますが、オンライン面接であれば会場のレンタル費や会場までの交通費などを削減することが可能です。
ただ、一次面接から最終面接までの全てをオンラインで実施するのは避けましょう。自社にマッチする人材かどうかをオンライン上で確かめるのが難しい場合もあるため、一次面接はオンライン、最終面接は対面のように使い分けることが大切です。
採用のミスマッチをなくす
選考途中や内定後に辞退されてしまうと、再び募集をかけなければならないケースもあります。そのため、選考中からミスマッチをなくすための取り組みも重要です。辞退する人数や割合を抑えられれば、採用担当者の負担も抑えられるため、人件費の削減につながります。
カジュアル面談で企業・学生の双方にギャップがないか確かめたり、適性検査の結果を重視するようにしたりと、ミスマッチを防ぐ施策を考えてみましょう。また、内定者には定期的なコンタクトを取ったり、懇親会を開催したりと、興味・関心が薄れないようフォローするのがおすすめです。
離職率を下げる
選考から内定までの辞退だけでなく、入社後の早期離職にも注意が必要です。せっかく入社した人材がすぐに辞めてしまうと、採用活動のやり直しが必要になったり、人材不足のなかで業務を進める必要性が生じたりと、企業にとって大きな損失となるでしょう。
早期離職を防ぎ、定着率を向上させるためには、さまざまな取り組みが必要です。人材の定着率が低い場合は、社内コミュニケーションの強化をはじめ、教育体制の構築や人事評価制度の見直しといった施策を試してみましょう。
ペルソナシートの作り方
離職率の改善をはじめ、マッチ度の高い人材を採用したい場合は、ペルソナシートの作成がおすすめです。採用活動におけるペルソナシートとは、自社の求める人物像を具体的にまとめた資料のこと。年齢や思考、行動特性などを設定することで、企業がどういった人材を採用したいのかが明確になります。
また、ペルソナシートをもとに採用活動を進めることで、応募者に対して効果的なアピールが可能となり、就活生と企業のミスマッチを防ぐことが可能です。
以下の記事では、ペルソナシートの概要から作り方まで詳しく紹介しているので、あわせて確認してみてください。
コストの継続的な測定には採用計画の併用も重要
定期的に採用活動を見直し、今後の採用に活かすための方法を考えるためには、採用計画書を作成しておくことが欠かせません。
採用計画とは、採用の手法や人数、スケジュールなどを明確にまとめた計画書のことで、採用活動の現状把握や改善点の発見・分析などにも役立てられます。そのため、新卒採用の場合は採用手法ごとの費用対効果を確認するなど、外部コストや内部コストといった採用コストを整理する際にも活用できます。
なお、以下の記事で紹介しているキミスカの進捗管理シートを活用すれば、内定承諾単価やエントリー単価などもまとめられます。採用コストや採用単価の測定もできるため、ぜひ活用してみてください。
新卒採用コストを見直して効果的な採用活動を行おう
新卒の採用コストは1人あたりの平均が100万円近く及びますが、中途採用よりも採用単価を抑えやすく、将来の幹部候補として優秀な人材を採用しやすいのがメリットに挙げられます。
ただ、人材獲得のためにさまざまな採用手法を導入したり、採用担当者の負担が増えてしまったりすると、採用コストが大きく膨らみ、新卒採用のメリットが打ち消されるかもしれません。ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、自社の採用コストを把握して効果的な採用活動を模索してみてください。
ダイレクトリクルーティングサービスを提供しているキミスカは、代行オプションにも定評があります。スカウト送信をはじめ、学生リストの作成やエントリー返信などの代行にも対応しており、採用担当者の人件費を削減することが可能です。
キミスカのサービス概要については、こちらをチェックしてみてください。