新卒採用ならではのメリットとは?中途との違いや採用のポイントも解説

近年、採用活動の早期化や手法の多様化が進み、売り手市場の中で人材獲得競争が激化しています。このような状況で、新卒採用にコストをかけるべきか悩む企業は少なくありません。しかし、新卒採用には数多くのメリットがあり、場合によっては中途採用よりも企業の成長につながる可能性があります。

今回は新卒採用や中途採用のメリット・デメリットをはじめ、新卒採用に向いている企業の状況をパターン別に解説します。また、新卒採用を成功に導くために押さえておきたいポイントもまとめているので、ぜひ自社の採用活動に役立ててみてください。

新卒採用を行うメリット8つ

新卒採用を行うことで、企業はどういったメリットが得られるのでしょうか。ここでは、新卒採用のメリットを8つ紹介します。新卒採用と中途採用のどちらに注力すべきか悩んでいる方は、ぜひ自社の状況と照らし合わせながら読み進めてみましょう。

1.幹部候補として採用・育成できる

新卒採用のメリットの中で特に注目したいのが、幹部候補として採用・育成できることです。

中途採用の人材は前職の企業文化や経験があるために、新しい環境に馴染めないケースも少なくありません。一方で、新卒採用は社会人経験がない分、物事を柔軟に吸収してくれます。そのため、新卒の人材にジョブローテーションや転勤といった経験を積ませることで、企業の将来を担う幹部として育成することが可能です。

2.企業規模に関係なく優秀な人材獲得が見込める

優秀な人材獲得が見込める点も新卒採用のメリットです。特に中小企業の場合は、中途よりも新卒採用の市場のほうが優秀な人材を見つけられる可能性があります。

というのも、優秀な人材が中途採用のマーケットに出ることは多くはなく、出たとしても競争率の高さから優秀な人材を中途で獲得するのは難しいでしょう。

その点、新卒採用の市場は大きく、採用手法やアプローチの仕方によっては認知度が高くない中小企業でも優秀な人材の獲得が見込めます。

3.採用コストを抑えられる

新卒・中途に関わらず採用活動には多くのコストがかかります。就活みらい研究所が発表した『就職白書2020』によると、新卒1人あたりの採用コストは93万6,000円、中途採用の場合破103万3,000円という調査結果が出ており、新卒採用のほうが採用コストを抑えられるでしょう。

もちろん、採用後の教育には長い期間を要するために、「新卒採用のほうがコストが大きくなるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、新卒採用は複数の人材を採用しやすいため、求人広告の掲載やイベントの参加・開催などにかかるコストを考えても、1人あたりのコストを抑えられます。

なお、採用コストについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。新卒の採用コストを内部・外部に分けて解説しているほか、算出方法やコストを抑えるためのポイントを紹介しています。

4.採用活動や研修を効率的に行える

新卒採用はまとまった人数を決まった時期に採用できるため、採用活動や研修を効率よく進められるのもメリットです。

例えば、政府主導の新卒採用スケジュールは、広報解禁が3月1日〜、選考活動の解禁が6月1日〜、内定出しの解禁が10月1日〜となっています。採用活動のスケジュールは企業によって異なりますが、新卒採用は大学卒業を見込んで行うため、逆算して予定を立てられるのがポイントです。

また毎年のように新卒採用を行えば、採用のノウハウが蓄積されていくため、自社にとって最適な採用フローを構築することもできるでしょう。

5.組織の活性化や成長につながる

新卒の社員が入社することで、組織の活性化や成長につながる点も新卒採用のメリットといえます。例えば、新卒社員の教育を担当する既存社員にとっては成長の機会となるほか、上司も新卒社員が入ることでマネジメント力が磨かれるなど、既存社員にとってプラスの刺激になります。

また、先輩社員が新卒社員に教えることで、業務に関する理解や技能を深めることにもつながるでしょう。なかには新卒社員が新しい視点をもたらしてくれることもあるため、新卒採用を行うことで組織のさらなる成長が見込めます。

6.採用活動が知名度向上につながる

新卒の採用活動は若い人材の獲得だけでなく、企業の認知度向上にもつながります。というのも、新卒採用のマーケットは非常に大きく、就活生は業界研究や企業研究などを通じて自身に合った企業を探しているためです。

もちろん、求人広告の掲載やナビサイトの活用など、企業が積極的に情報発信する必要がありますが、多くの学生の目に留まることで自社の存在を広くアピールできます。

また、採用に至らなかったとしても、説明会や選考を通じて自社に対して好印象を抱く学生もいるかもしれません。このように、新卒採用を通じて認知度やイメージ向上を期待できるのは嬉しいポイントです。

7.従業員の年齢構成を最適化できる

新卒採用を定期的に行うことで、企業は社内の年齢構成を最適化できます。

長期的に企業活動を行っていくためには、社内の新陳代謝が重要と言われており、若手からベテランまでの比率が緩やかに減少していく形が理想的です。仮にベテランが多い企業だと、定年を機に急激な人手不足に陥る可能性もあるため、年齢構成のバランスを取ることはリスク回避にもつながります。

定期的な新卒採用が安定した経営につながるため、人事担当者だけでなく経営層も新卒を採用するメリットを把握しておいたほうが良いでしょう。

8.企業文化の継承を行える

新卒採用を通じて将来の幹部候補を採用・育成できますが、企業文化を継承できる点もメリットとして挙げられます。企業文化とは、企業が持つ独自の価値観や行動規範のことを指しており、従業員の行動や精神性が大きく関わっています。

中途採用だと、前職でのやり方や価値観に固執してしまい、ミスマッチや退職につながるケースは珍しくありません。一方で、新卒採用の場合は就労経験がないため、企業への愛着が湧きやすく、ミッション・ビジョン・バリューといった経営方針が浸透しやすいです。

そのため、幹部候補の採用や企業文化の継承など、長期の視点で見たときに新卒採用は大きなメリットをもたらしてくれます。

新卒採用のデメリット5つ

新卒採用のメリットを紹介しましたが、企業によってはデメリットにより大きな損失を被るケースもあります。

企業が適切な採用活動を行うためにも、ここで紹介する5つのデメリットについても把握しておきましょう。

1.人材育成にコストがかかる

即戦力となる中途採用とは異なり、新卒採用の場合は入社後の育成にコストがかかってしまいます。社会人としての基本的なマナーをはじめ、業務に関する知識やスキルを教育していかなければなりません。

人材育成の方法は集合研修や自学自習、OJTが代表的ですが、研修を社内で行うと担当者の負担が大きくなり、外部委託すると多額のコストがかかってしまいます。

複数の人材を採用することで研修をまとめて行えますが、中途採用に比べると教育コストがかかってしまう点はデメリットといえるでしょう。

2.採用までに時間がかかってしまう

新卒採用はゴールから逆算して予定を立てやすい一方で、採用までに時間がかかってしまうことがデメリットとして挙げられます。中途採用の場合、募集・選考を経て内定が決まれば、2ヶ月ほどで入社するのが一般的です。

しかし、新卒採用は募集開始から入社までに約1年かかってしまいます。また、母集団形成のために会社説明会やイベントを開催したり、自社とのマッチ度を確かめるために就活生一人ひとりと面接を行ったりと、多くの工程を経る必要がある点は把握しておきましょう。

3.フォローや受け入れ準備に工数がかかる

新卒採用は複数の人材をまとめて採用できるメリットがありますが、その分フォローや受け入れ準備に工数がかかってしまいます。特に新卒採用のノウハウが蓄積されていない企業では、配属先の部署や教育担当者の選定に時間がかかってしまうでしょう。

また、入社後のフォローができているかどうかが、人材の定着率を左右することも珍しくありません。そのため、教育担当者に適切な人物を選んだり十分なコストをかけ教育を行ったりと、フォローや受け入れ体制の構築は慎重に検討しなければなりません。

4.早期離職のリスクがある

採用のミスマッチにより、早期離職や内定辞退につながる可能性があります。これは新卒・中途のどちらにも言えることですが、それぞれミスマッチの原因が異なることを把握しておきましょう。

新卒の場合は就労経験がないため、企業の良い面しか見ておらず、入社後にギャップに気づき転職を考える人も少なくありません。また、企業側で入社後のフォローが不十分だったり、適性のない部署に配属してしまったりすることで、モチベーションの低下につながる恐れもあります。

新卒採用は長期にわたって採用活動を行う必要があるため、それまでの人的リソースやコストを考えると、企業と就活生のどちらにもメリットはないでしょう。

5.採用の難易度が景気に左右される

新卒採用を行ううえで注意しておきたいのは、採用の難易度が景気や社会情勢に左右されやすい点です。

例えば、近年は人手不足から「売り手市場」と言われていますが、好景気の場合も求職者数より求人数のほうが多いため、求職者が有利となります。売り手市場では就活生が大手企業に集中する傾向にあり、中小企業は採用活動の見通しを立てることが難しくなるでしょう。

また、企業の経営状況によっては採用活動にコストをかけづらい場合もあります。求人広告や採用イベントなど、新卒人材との接点が減ることで母集団の形成を十分に行えないケースもあり、中小企業にとっては不利な状況に陥るかもしれません。

中途採用のメリット・デメリット

ここからは、中途採用のメリット・デメリットを紹介します。新卒・中途について理解を深めることで、企業の状況に合った採用活動を行いやすくなるため、それぞれ確認しておきましょう。

中途採用のメリット

まずは、企業が中途採用を行うメリットを以下にまとめました。

  1. 即戦力となる人材を採用できる
  2. 必要な人材をピンポイントで採用できる
  3. 自社にないスキルやノウハウを吸収できる

中途採用は自社に必要な知識や経験、スキルを持った人材を対象に募集をかけるため、即戦力となる人材を獲得しやすいのが大きなメリットです。年齢やスキルなどの条件は企業や状況によって異なりますが、一定の社会人経験があるために新卒採用よりも育成コストを抑えられるでしょう。

また、自社が持っていないノウハウやスキルを、中途採用で入社した人材から吸収できるのもメリットに挙げられます。採用した人材の持っているスキルやノウハウ、人脈が組織や業務の活性化につながるケースもあるでしょう。

企業の文化や価値観は大事なものですが、中途採用で新たな人材を迎えることで新しい視点や気づきをもたらしてくれるかもしれません。

中途採用のデメリット

中途採用は即戦力となる人材をピンポイントで採用できる点が大きなメリットですが、安易に進めてしまうと企業の損失につながる恐れもあります。特に以下にまとめた2つのデメリットは、十分に把握しておきましょう。

  1. 企業の文化や方針と合わない可能性がある
  2. 入社後に転職されるリスクがある

新卒採用の場合は社会人経験がないために、企業文化や社風にもすんなりと馴染む傾向にあります。しかし、中途採用の場合は前職での価値観で物事を考えることもあり、入社してから企業の文化や方針とのギャップを感じることも珍しくありません。

前職とのギャップに悩まされた状態では、社内でのコミュニケーションや業務にマイナスの影響を及ぼす可能性もあるでしょう。こうしたストレスやギャップから、入社後すぐに転職するリスクもあるため、中途採用を行う場合は人材の見極めが特に重要といえます。

【パターン別】新卒採用に向いている企業の状況とは

新卒採用と中途採用のメリット・デメリットを紹介してきましたが、どういった状況だと新卒採用を行ったほうが良いのでしょうか。

ここでは、新卒採用を行うべきかどうか悩んでいる方に向けて、新卒採用に向いている企業の状況をパターン別に3つ紹介します。企業文化の継承や新規事業の立ち上げなど、以下に当てはまるものがあれば、新卒採用を検討してみてください。

長期的に企業文化を継承したい

長期的な視点から企業文化を継承したいと考えている場合は、新卒採用がおすすめです。メリットで紹介したように、新卒採用で入社する人材は就労経験がないため、中途採用よりも企業文化が浸透しやすい傾向にあります。

また、企業文化は経営層が伝えるだけでは醸成されません。従業員一人ひとりの意識や行動が積み重なることで自然と定着していくため、企業文化の継承・醸成を図りたい場合は新卒採用が適しているでしょう。

新規事業の立ち上げを予定している

社内で新規事業の立ち上げを予定している場合も、新卒採用を検討してみてください。「新規事業の立ち上げには、経験豊富な人材が適しているのでは?」と思うかもしれません。しかし、新卒人材は社会人未経験だからこその柔軟性を持ち、物事をフラットな視点で捉えるため、新規事業で力を発揮する可能性があります。

従来の業務とは異なり、新規事業は担当者に主体性を持たせやすいのも特徴です。特にノウハウが蓄積されていない事業であれば、新卒・先輩に関係なく積極性と責任感が生まれるため、従業員の成長にもつながるでしょう。

企業での成長を自社の強みにしたい

従業員が成長できる環境を整えたい場合も、新卒採用に向いています。従業員の成長やモチベーションは企業の業績にも大きく関わっており、組織全体の活性化にもつながるためです。

また、企業での成長を自社の強みにすると、採用活動でもプラスの影響をもたらす可能性があります。就活生が企業を選ぶ際の軸はさまざまにありますが、なかには企業で成長できるかどうかを重視している人も少なくありません。

そのため従業員の成長を促すことは、企業の発展だけでなく就活生に選ばれる企業としてのイメージ向上にもつながるため、連鎖的なメリットを享受できるでしょう。

新卒採用を成功させるためのポイント

最後に、新卒採用を成功させるために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

採用活動の目的を明確にする

採用活動を行ううえで重要なのは、「若手を増やしたい」「幹部候補を採用したい」などの目的を明確にすることです。もしも目的が曖昧な状態で採用活動を進めてしまうと、採用した新卒人材の配属先で年齢構成がいびつになってしまい、早期離職につながる場合もあります。

採用活動の目的は企業ごとに異なりますが、共通しているのは組織の力を高めて利益を上げていくことでしょう。採用活動を行う際は、自社が抱えている課題を洗い出して採用目的を明確にし、どのような人材を何人募集するのか、具体的にまとめることが大切です。

採用活動の目的を明確にするためには、採用計画表を作成するのがおすすめです。以下の記事では、採用計画が必要な理由をはじめ、計画書作成に必要なポイントをまとめているので、ぜひ自社の採用活動に役立ててみてください。

採用人数から逆算して母集団を形成する

新卒採用を成功させるためには、母集団の形成も欠かせないポイントです。たとえ優秀な人材を獲得できたとしても、入社人数が多いために適切なフォローや育成ができず、人材が離れていってしまうケースも少なくありません。

優秀な人材の獲得は企業にとって重要ですが、人材のポテンシャルを活かすためにも、社内の人的リソースやコストを把握し、現実的な採用人数を検討しましょう。

そして、自社にとって最適な採用人数が分かれば、そこから逆算して母集団を形成していきます。母集団形成は自社の希望に近い採用活動を実現するために必要な取り組みであり、採用活動の効率化や入社後のミスマッチ防止などにもつながるため、欠かさず行っておきましょう。

以下の記事では、母集団形成の基本的なことから具体的なやり方まで詳しくまとめています。自社の採用活動を効率よく進めるヒントが詰まっているので、あわせて確認しておきましょう。

採用や評価の基準を設定する

中途採用の場合、自社に必要なスキルや知識を持った人材をピンポイントで採用できますが、新卒採用の場合はそうはいきません。就労経験がないためにポテンシャルや人柄が重視されますが、面接担当者ごとに採用基準が異なる場合があるため注意が必要です。

この状態ではミスマッチから離職につながったり、適性がない部署への配属で成績が落ちたりする可能性もあるため、選考の段階で採用や評価の基準を明確に設定しておきましょう。

評価基準の設定には、以下の記事で紹介している「面接官マニュアル」が参考になります。採用基準をはじめ、面接時におけるルールや質問などを記載しておくことで、面接の平準化を図ることが可能です。

新卒採用のメリットを活かすためには“出会う人材の質”が重要!

長期的な視点で見たときに、新卒採用は企業に多くのメリットをもたらしてくれます。新卒の人材を企業文化が浸透した幹部に育てられるほか、採用活動の効率化や年齢構成の最適化を図れるなど、さまざまな観点から企業にプラスの影響を与えてくれるでしょう。

しかし、こうしたメリットを活かすためには、人材の質にもこだわる必要があります。採用の目的が曖昧な状態では、自社とミスマッチな人材で母集団が形成されかねません。

母集団形成の質にこだわりたい場合は、ダイレクトリクルーティングサービス「キミスカ」の活用を検討してみてください。マッチ度の高い学生の抽出や、説明会・面接の管理、内定者フォローといった機能と多数搭載しています。

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