
採用面接では、人事担当者や役員クラスだけでなく、さまざまな部署の社員が面接官を務めることも珍しくありません。しかし、面接の流れや注意点を把握しておかないと、応募者からネガティブな印象を持たれる可能性があります。
そこで、おすすめなのが「面接官マニュアル」です。面接の心構えや具体的な流れ、質問事項などをまとめておけば、不要なリスクを回避して採用面接の質を高められます。ぜひ本記事で紹介するポイントを参考に、自社だけの面接官マニュアルを作成してみてください。
面接官マニュアルとは?
「面接官マニュアル」とは、自社の採用基準を明確にし、面接時のルールや質問などを記載した資料のことです。初めて面接官を務める人でも円滑に面接を進められるほか、応募者を公正に評価するための指針として活用できます。
また、人材獲得競争の激化や離職率の増加が深刻な問題となっている昨今、自社にマッチした人材を採用できるかどうかは企業にとって重要なポイントです。面接官マニュアルに評価項目や合格基準を明記しておけば、面接の平準化を図ることができ、自社の求める人材を獲得できる可能性を高められます。
「専門家と相談しながら面接官マニュアルを作りたい」「採用について幅広く相談したい」という方は、キミスカまで気軽にご相談ください。採用を成功に導くサポートをさせていただきます。キミスカの特徴はこちらよりご確認ください。
なぜ面接官マニュアルが必要なのか
面接官マニュアルが必要とされる理由はさまざまにあり、企業ごとに活用する目的も異なります。しかし、面接官が企業の顔として求職者からの印象を左右する存在であることは、面接官マニュアルが必要な理由の一つです。
例えば、エンワールド・ジャパンが転職経験者を対象に行った「中途採用における面接実態調査」では、以下の調査結果が出されています。
- 「面接や選考過程で志望度が上がった、企業に良い印象を持った」と回答した人のうち、56%が「面接官・人事担当者の人柄で志望度が上がった」と回答
- 「面接や選考過程で志望度が下がった、企業に良くない印象を持った」と回答した人のうち、49%が「面接官の人柄・マナーが悪かった」と最多の回答
このことから、面接官や人事担当者は求職者の志望度に大きく関わっていることが分かります。そのため、面接官を務めるときは、役職や部署に関係なく自分が企業の顔である自覚を持って面接に望むことが重要なのです。
ただ、企業によっては複数の部署から面接官を選定したり、人事担当者が初めて面接官を務めたりすることもあるでしょう。面接官マニュアルを作成しておけば、求職者からの印象を下げるリスクを減らすことができ、不慣れな人でもスムーズに面接を行えます。
面接官マニュアルに必要な項目
面接官マニュアルには、どんな内容を記載すれば良いのでしょうか。ここからは、面接官マニュアルに必要な項目を5つ紹介します。
また面接の進め方や質問案など、項目別に細かく解説しているので、実際に面接官マニュアルを作成する際の参考にしてみてください。
面接官の役割
面接では応募者のスキルや能力、経験、人柄などを確かめて合否の判定を出しますが、応募者からも入社するかどうか判断されていることを理解しておく必要があります。
そのため、面接官を務める社員に自身の役割を自覚してもらえるよう、以下の2つをマニュアルに記載しておきましょう。
- 自社に必要な人材かどうかを見極める
- 応募者に自社の魅力を伝え、入社意欲を高める
なお、面接官の役割については、自社ならではの内容にアレンジするのもおすすめです。面接官の役割をマニュアルに記載する際は、以下を参考にしてみてください。
- 応募者を見極め、自社の魅力をアピールして入社意欲を高める
- 企業の顔であることを意識し、応募者の価値観を尊重する
- 応募者が抱えている不安や疑問を解消する
面接官の心得・姿勢
面接では応募者の本音を引き出し、書類選考では分からない個性や価値観を見極めることが重要です。そこで、面接官の担う役割とあわせて、「どういった心得・姿勢で面接に臨むべきか」についても記載しましょう。
以下に挙げたような内容を盛り込むことで、誰が面接官を務めても共通認識を持つことができ、統一感や一貫性のある面接を実現できます。
- 応募者がリラックスして面接に臨める雰囲気を作る
- 応募者と面接官が話す割合は7:3を意識する
- 応募者の回答を深掘りして、本音や引き出す
面接の際は応募者が話しやすい雰囲気作りをするために、面接官が高圧的な態度をとったり話し過ぎたりしないことが肝心です。また、応募者一人ひとりに合わせた質問をするために、面接前にES(エントリーシート)や履歴書などに目を通しておくことも記載しておくと良いでしょう。
面接の進め方
続いて、限られた時間の中で面接を滞りなく進められるよう、マニュアルに面接の進行についても記載します。
- 挨拶・アイスブレイク
- 会社説明
- 質疑応答
- 逆質問
- クロージング
各項目の詳細は以下で解説しますが、自社の求める人物像に合わせて質問内容を変更するのもおすすめです。自社の求める人物像を明確にしたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
1.挨拶・アイスブレイク
どの企業でも、面接でいきなり本題に入ることは少ないでしょう。新卒・中途に関わらず求職者も緊張しているため、リラックスして面接を受けてもらうためにも挨拶やアイスブレイクから始めるのが基本です。
挨拶をするときはなるべく笑顔を意識し、まずは自身の所属部署と名前を伝えてから、応募者に自己紹介を促します。そして、アイスブレイクでは以下のような質問を投げかけてみましょう。
- 履歴書を拝見したんですが、趣味の○●はいつ頃から始めたんですか?
- 特技に○●と書かれていて驚いたんですが、何がきっかけで習得したんですか?
- ○●県にお住まいなんですね。実は昨年に旅行で行ってきて地域限定の○●を食べたんですが、ご存じですか?
面接の冒頭できちんと挨拶やアイスブレイクができれば、面接官の人柄が伝わって好印象を残すことも可能です。応募者の本音を引き出すことにもつながるため、面接官の志望動機などの自己開示をしたり、話すトーンを応募者に合わせたりして、雰囲気作りに努めましょう。
2.会社説明
応募者の緊張が緩和されたところで、会社の紹介をしましょう。もちろん、二次面接や最終面接などであれば、会社説明を省いても問題ありません。
一次面接で求職者と初めて話す場合は、求人募集や説明会で伝えきれなかった情報を盛り込むのがおすすめです。
- どんな事業を行っているか
- 自社の社風・強み
- 求人募集の背景
- 募集職種の仕事内容、仕事で得られる成果 など
面接官にとっては当たり前のことだったとしても、求職者からすれば初めて知る情報もあります。改めて会社説明をすれば求職者は企業理解を深めることができ、ミスマッチを防ぐことにもつながるでしょう。
3.質疑応答
自己紹介や会社説明が済んだら、面接官から求職者に対して質問を投げかけます。質疑応答の内容は後述しますが、面接官からの質問では以下のポイントを見極めるのが基本です。
- 求職者の志望動機
- 仕事に対する価値観
- 求職者のパーソナリティ
面接での質疑応答は、ESや履歴書に書かれた内容をベースに進められます。新卒採用であれば「学生時代に頑張ったこと」や「強み・弱み」などが定番ですが、中途採用の場合は「転職理由」「キャリアプラン」などについて尋ねることがほとんどでしょう。
自社にマッチした人材を採用するためにも、質疑応答の内容は新卒・中途に分けたり、採用目的や募集職種などに合わせたりするのが重要です。
4.逆質問
企業によっては、応募者から面接官に対して質問する「逆質問」の機会を設けていないこともあります。しかし、逆質問を通じて応募者は面接の前や最中に感じた疑問を解消することができ、企業イメージとすり合わせてマッチ度を確かめられます。
また、質問内容によっては応募者への回答に自社のPRポイントを盛り込める場合もあるため、応募者の志望度の向上にもつながるかもしれません。採用のミスマッチを防ぎ、求職者に好印象を持ってもらうためにも、面接ではできるだけ逆質問の時間を設けるのがおすすめです。
5.クロージング
面接の最後は、クロージングで締めます。クロージングでは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- いつまでに合否の連絡をするのか
- 合否の連絡方法
- 今後の選考スケジュール
企業によっては、面接後に応募者を見送る場合もあります。できるだけ求職者に好印象を残したいのであれば、面接後にどこまで見送るのかを面接官マニュアルに記載しておきましょう。
また、面接官の態度は求職者にも見られているので、最後まで気を抜かないよう注意書きしておくのもおすすめです。
評価項目別の質問
できるだけ自社にマッチした人材を採用したい場合は、質問案を評価項目別に分けて面接官マニュアルに記載しましょう。特に、面接官の経験が少ない人が面接に臨むと、一問一答のようになって効果的な質問ができない可能性もあります。
評価項目別に質問案を整理しておくと、自社に必要な人材かどうかを確かめられ、合否の判定を出しやすくなるでしょう。また、どのような状況でも臨機応変に面接を進められるよう、質問例はできるだけ多く挙げておくのもポイントです。
なお、質問の仕方は限定的な回答を求める「クローズドクエスチョン」と、自由に答えてもらう「オープンクエスチョン」があります。面接ではできるだけオープンクエスチョンを増やし、応募者の考えや表現を引き出すように努めましょう。
入社意欲の高さや仕事への考え方を尋ねる質問
入社意欲の高さや仕事への考え方を問う質問は、応募者と企業のマッチ度を確かめるために欠かせない項目です。ESや履歴書に書ききれなかったことを深掘るように、具体的に聞き出していきましょう。
- 当社に入社して、やってみたいことはありますか?
- 5年後、10年後のキャリアプランについて教えてください
- 当社を志望した一番の決め手は何ですか?
- 企業選びではどういったポイントを重視していますか?
職業適性を確認するための質問
新卒採用の場合は実務経験がないため、ポテンシャルを重視して合否の判定を出すことがほんとです。ただ、質問内容によっては職業適性を確認することも不可能ではありません。
新卒・中途採用で職業適性を確かめるための質問例を以下に挙げたので、自社で面接官マニュアルを作成する際の参考にしてみてください。
- 周りからはどんな人物だと評価されていますか?
- あなたの強みと、仕事への活かし方を教えてください
- 仕事でミスをしたことはありますか?
- 前職で担当していた業務内容について教えてください
- 志望されている職種では、お客様と直接やり取りする可能性もあります。クレームを受けた場合、どのように対処しようと考えていますか?
応募者のパーソナリティを探る質問
性格や人柄などのパーソナリティに関する評価項目も、面接官マニュアルに記載しておきましょう。応募者がどういった性格を持ち、課題に対してどんな乗り越え方をするのかといったポイントは、書類選考では読み取りにくいものです。
応募者と直接話せる面接だからこそ、以下のような質問を通じて応募者のパーソナリティを探りましょう。
- あなたは家族や友人からどんな性格だとよく言われますか?
- あなたの長所と短所について教えてください
- これまで(学生時代に)特に力を入れたことは何ですか?
- 特に印象に残っている挫折の経験と、それを乗り越えたかどうかを教えてください
ミスマッチを防ぐための質問
入社意欲の高さやパーソナリティに関する質問もミスマッチを防ぐことにつながりますが、面接ではより細かいポイントもすり合わせておくのがおすすめです。労働条件や業務内容などをすり合わせておかないと、応募者が入社後にミスマッチを感じ、退職してしまう可能性もあります。
そこで、ミスマッチを防ぐためにも以下の例を参考に、質問案を考えておきましょう。
- 場合によっては地方の営業所に転勤する可能性もありますが、問題ないでしょうか?
- 応募されたポジションは○●で、主な業務内容は○●ですが、お間違いないでしょうか?
- 応募されたポジションでは1ヶ月に○●時間ほど残業がありますが、よろしいでしょうか?
面接でNGな質問・行動
面接官マニュアルには、面接でのNG行動についてもまとめておきましょう。仮に圧迫面接やプライベートな質問をしてしまうと、応募者にネガティブな印象を持たれ、悪評が広まる危険性もあります。企業イメージの損失にもつながるため、面接官が企業の顔であることを前提に、以下の質問や行動を避けるように促しましょう。
- 国籍
- 家族構成
- 宗教
- 支持政党
- 愛読書
- 尊敬する歴史上の人物
- 恋人の有無、結婚願望
- 家庭環境
- 本籍・出生地 など
面接で避けるべき質問については、厚生労働省の「公正な採用選考の基本 採用選考時に配慮すべき事項」で詳しく掲載されているので、マニュアル作成時に確認しておきましょう。
また面接では以下の行動も避けるのが無難です。
- 持病に関して回答を強要すること
- 不快な言動
- 高圧的な態度
- くだけすぎた態度
人によっては、意図せず上記の行動を取ってしまう可能性もあります。面接官を務める人がNG質問や行動をしないか、事前にロールプレイングなどをして確かめておくと良いでしょう。
このほか、面接に関する注意点をはじめ、採用面接に関するサポートを求めている方は、キミスカまでご相談ください。キミスカは新卒採用向けのダイレクトリクルーティングサービスを展開しており、採用市場に関する最新の情報に基づいて最適なご提案をさせていただきます。
キミスカの概要については、こちらの資料をご確認ください。
面接官マニュアル活用のポイント
最後に、面接官マニュアルを活用する際のポイントを紹介します。採用面接の精度を高めることにもつながるので、ぜひチェックしてみてください。
面接の段階・形式に合わせる
ひと口に「面接」と言っても、段階や形式はさまざまです。一次面接や二次面接、最終面接など、面接の段階ごとに面接官の担当者や質問内容も異なります。また、企業によっては個人面接だけでなく集団面接やグループディスカッションを行うケースも珍しくありません。
面接官が適切な評価・対応を行えるよう、自社での面接段階や形式などに合わせて面接官マニュアルを作成するのもおすすめです。
ブラッシュアップする
基本的に面接官マニュアルは面接官を務める社員に配布し、面接本番で活用することになります。ただ、実際に面接を行う前に、マニュアルを使ってロールプレイングしてみるのもおすすめです。面接官の経験が浅い人などがマニュアルに沿って練習すれば、本番でもリラックスして面接に臨めるほか、効果的な採用面接を行えるようになるでしょう。
また、面接官マニュアルは一度作って終わりではありません。ロールプレイングや実際の面接で活用してみて、改善点・不備があれば適宜ブラッシュアップしてマニュアルに反映させていきましょう。
新卒・中途で内容を変える
面接官マニュアルの内容は、新卒と中途で応募者に求める要件が異なるためそれぞれを分けて作成することが重要です。
新卒の場合は即戦力よりもポテンシャルを重視して採用するため、面接では行動特性や価値観などを深掘りして、自社とのマッチ度を見極める必要があります。
中途の場合は即戦力であることが重視されますが、資格や実務経験の有無など表面的な確認をするとミスマッチになるかもしれません。面接官マニュアルに「能力や実績はとことん深掘りして職務適性を見極める」などと記載しておきましょう。
オンライン面接についてもまとめる
近年はオンライン面接を行う企業も増えてきました。しかし、オンライン面接のやり方や進め方を社内で統一しておかないと、担当者が変わった際などにスムーズに面接を行えないかもしれません。
そこで、オンライン面接を実施している企業は、ここで紹介するポイントもマニュアルに記載してみてください。
- オンライン面接で使うツールの確認
- 機材トラブルなどが発生した際の代替案を用意
- ハキハキと話し、表情は豊かに
- 話すときはジェスチャーなどを意識する
- なるべく下を向かず、カメラを見て会話する
面接官マニュアルで採用活動の質を高めよう
面接官マニュアルは面接官の属人化を防ぎ、採用面接の質を一定水準以上に保つために欠かせない資料です。面接の流れをはじめ、具体的な質問案や評価項目などをまとめておけば、マッチ度の高い人材の獲得にもつながるでしょう。また、面接で避けるべき質問やNG行動といった注意点を記載することで、応募者からマイナスの印象を持たれるリスクも回避できます。
ぜひ本記事で紹介したポイントを参考に、自社だけの面接官マニュアルを作成してみましょう。
「面接官マニュアルだけでうまく採用できるか不安」「自社に合った人材が見つからない」といった悩みを抱えている方は、ダイレクトリクルーティングサービスの活用を検討してみてください。キミスカでは母集団の形成や採用ペルソナの設定、採用市場の動向などに精通しており、採用を成功に導くサポートを行っています。採用活動の効率化によって人事担当者の負担を減らし、企業にマッチした人材を獲得したい企業は、ぜひキミスカまでご相談ください。