
「求人広告費は高騰するばかりなのに、良い人材からの応募がない…」
「採用しても、社風に合わず早期離職してしまう…」
多くの中小企業にとって、採用活動は経営の根幹を揺るがす重要な課題です。こうした状況を打破する一手として、今「リファラル採用」が注目されています。しかし、「本当に社員の紹介だけで採用できるの?」と、その効果に半信半疑の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リファラル採用の基本から、具体的な成功事例、そして自社で成功させるためのポイントまでを網羅的に解説します。この記事を読めば、経営層を説得し、コストを抑えながら自社にマッチした人材を獲得するための、具体的なアクションプランが見つかるはずです。
リファラル採用とは?今、注目される理由とメリット
リファラル採用の成功事例を見る前に、まずはその基本的な定義と、なぜ今多くの企業、特に中小企業で注目されているのかを理解しておきましょう。
リファラル採用の基本とメリット
リファラル採用とは、自社の社員に、友人や知人といった信頼できる人材を紹介してもらう採用手法のことです。「リファラル(referral)」は「紹介・推薦」を意味します。最大のメリットは、採用コストを大幅に抑えられる点と、社員の紹介であるため、候補者のスキルや人柄を事前に把握しやすく、カルチャーフィットした人材を獲得しやすい点です。結果として、入社後の定着率が高まり、ミスマッチによる早期離職を防ぐ効果が期待できます。
なぜ中小企業にこそリファラル採用が有効なのか
知名度や採用予算で大手企業に劣る中小企業にとって、リファラル採用は非常に強力な武器となります。求人広告では伝えきれない自社のリアルな魅力や社風を、社員が候補者に直接伝えることで、候補者の入社意欲を高めることができるからです。
また、社員自身が自社の魅力を再認識し、エンゲージメントが向上するという副次的な効果もあります。限られたリソースの中で、企業の「人」そのものを採用力に変えられるのが、リファラル採用の最大の強みと言えるでしょう。
【業界・課題別】リファラル採用の成功事例5選
ここでは、実際にリファラル採用を導入し、採用課題の解決に成功した企業の事例を、業界や直面していた課題別に5つご紹介します。
【IT・ベンチャー企業】株式会社メルカリの事例

フリマアプリで知られる株式会社メルカリは、スタートアップ期からリファラル採用に注力していることで有名です。同社は、採用したい人材と「濃い関係」を築くことを重視。そのために、オウンドメディア「mercan(メルカン)」を立ち上げ、自社の事業内容やカルチャー、働く人のリアルな姿を継続的に発信しました。
社員が友人・知人に自社を説明する際の共通言語となり、結果としてカルチャーフィットした人材の採用に繋がり、日本を代表するユニコーン企業へと成長する原動力の一つとなりました。
【飲食・サービス業】株式会社串カツ田中ホールディングスの事例

「串カツ田中」を全国展開する同社では、アルバイトスタッフの採用・定着が課題でした。そこで、アルバイト・正社員問わず利用できるリファラル採用制度を導入。紹介した友人が入社した場合、インセンティブを支給するシンプルな仕組みです。
この取り組みにより、従業員満足度とエンゲージメントが向上し、採用コストを大幅に削減することに成功。「働きがいのある会社」としての企業ブランディングにも繋がっています。
【製造・メーカー】TDK株式会社の事例

大手電子部品メーカーのTDK株式会社では、特に地方拠点における即戦力人材の採用に課題を抱えていました。そこで、社員の繋がりを活かすリファラル採用を強化。社員が制度を使いやすいように、専用のツールを導入し、紹介プロセスを簡略化しました。
結果、これまでアプローチが難しかった地方の優秀な人材や、市場には出てこない潜在層の採用に成功。社員のエンゲージメント向上にも寄与しています。
【地方企業】株式会社イシダの事例

京都に本社を置く老舗の計量包装機器メーカー、株式会社イシダは、120年以上の歴史を持つ企業としての安定感と、新しい挑戦を両立する社風が魅力です。同社では、この独自のカルチャーにフィットする人材を獲得するため、リファラル採用を導入。社員が自社の魅力を語り、旧友や後輩に声をかける文化を醸成しました。
これにより、U・Iターンを含む、地域に根ざして長く活躍してくれる人材の獲得に繋がっています。
【採用コスト削減】freee株式会社の事例

クラウド会計ソフトで知られるfreee株式会社は、創業当時からリファラル採用を推進しています。同社では、リファラル採用で貢献した社員を表彰する制度を設けるなど、社員が積極的に参加したくなる文化づくりに注力。
結果として採用の多くをリファラル経由で決定することに成功し、エージェントフィーなどの採用コストを大幅に削減。その分のコストを事業成長に再投資するという好循環を生み出しています。
成功事例に共通する5つのポイント
様々な業界の成功事例を見てきましたが、そこにはいくつかの共通する成功法則が存在します。自社でリファラル採用を成功させるために、これから解説する5つのポイントを、ぜひ制度設計の参考にしてください。
経営層が率先してコミットしている
成功している企業に共通するのは、リファラル採用が単なる人事施策ではなく、「経営の重要マター」として位置づけられている点です。経営層が自らの言葉で、なぜリファラル採用が重要なのかを社員に語り、積極的に協力する姿勢を見せることで、社員の当事者意識が高まります。「社長が本気だ」と伝わることが、社員を動かす最初の、そして最も重要な一歩です。
魅力的なインセンティブ(報酬)制度を設計している
社員の善意だけに頼るのではなく、紹介してくれた社員への感謝を形にするインセンティブ制度は、制度を活性化させる上で非常に重要です。金銭的な報酬(インセンティブ)はもちろんですが、「特別休暇の付与」や「食事券のプレゼント」といった非金銭的な報酬も有効です。重要なのは、社員が「友人に紹介してあげたい」と思えるような、納得感と魅力のある制度を設計することです。報酬額の相場や、インセンティブの支払いタイミングなども明確に定めておきましょう。
社員が協力しやすい「仕組み」を整えている
「紹介してください」と呼びかけるだけでは、社員は何をすれば良いか分かりません。成功している企業は、社員が友人・知人に声をかけやすくなる「仕組み」を整えています。例えば、社員がスマホから簡単に求人情報を友人に送れるツールを導入したり、カジュアルに会社を紹介できる資料や動画を用意したりするなど、紹介のハードルを徹底的に下げることが、紹介数を増やすための鍵となります。
社内での告知・周知を徹底している
どんなに良い制度を作っても、社員に知られていなければ意味がありません。全社朝礼での呼びかけ、社内SNSやチャットツールでの定期的なリマインド、ポスターの掲示など、あらゆる手段を使って制度の存在を周知徹底することが重要です。また、実際にリファラル採用で入社した社員がいれば、その成功事例を社内報などで紹介することで、「自分も協力してみよう」という機運を高めることができます。
カジュアルな情報交換の場を設けている
いきなり「選考」となると、社員も友人も身構えてしまいます。そこで、選考とは関係なく、社員が気軽に友人を会社に招待できる「場」を用意することが効果的です。例えば、オフィスでのランチ会や、オンラインでのミートアップイベントなどが考えられます。こうしたカジュアルな接点を通じて、候補者に会社の雰囲気を感じてもらうことが、自然な形での応募に繋がります。
明日から使える!リファラル採用の導入・活性化ステップ
ここからは、実際に自社でリファラル採用を導入し、活性化させていくための具体的な手順を4つのステップで解説します。このステップに沿って進めることで、制度の導入から運用、改善までをスムーズに行うことができます。
ステップ1:制度設計(ルールと報酬を決める)
まず、リファラル採用の基本的なルールを設計します。誰が紹介の対象となるのか(正社員、契約社員など)、どんなポジションを募集するのか、そして紹介者へのインセンティブ(報酬)の内容と支払い条件などを明確に定めましょう。この際、不採用になった場合の人間関係トラブルを避けるため、「選考は通常の応募者と同様に、公平に行う」という原則を明記しておくことが非常に重要です。
ステップ2:社員への周知・協力依頼
制度が固まったら、全社員に向けて周知を行います。なぜリファラル採用を始めるのか、会社にとって、そして社員にとってどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、協力を仰ぎましょう。経営層から直接、その重要性を語ってもらう機会を設けるのが最も効果的です。全社メールや社内SNSでのアナウンス、説明会の実施などを通じて、制度への理解と協力を促します。
ステップ3:紹介しやすい環境づくり(情報提供)
次に、社員が友人・知人に自社を紹介しやすくなるためのツールを準備します。前述の「採用ピッチ資料」や、社員インタビュー記事、オフィスの様子が分かる動画など、「これを見せれば会社の魅力が伝わる」というコンテンツを用意しましょう。これらの情報を、社員がいつでも簡単にアクセスできる社内ポータルなどにまとめておくことで、紹介活動が活発になります。
採用ピッチ資料の効果的な作成方法やメリットについては、こちらの記事『【完全版】採用ピッチ資料とは?|盛り込むべき全項目と作り方、参考事例を解説!』を合わせてご覧ください。
ステップ4:効果測定と改善
制度を導入したら、必ず定期的に効果を測定し、改善のサイクルを回しましょう。「紹介人数」「選考通過率」「採用決定数」といったデータを分析し、制度がうまく機能しているかを確認します。もし紹介が少ないようであれば、インセンティブの内容を見直したり、周知方法を工夫したりと、社員からのフィードバックも聞きながら、より良い制度へと継続的に改善していくことが、長期的な成功に繋がります。
リファラル採用でよくある失敗と注意点
ここでは、制度導入で陥りがちな3つの失敗例とその対策を解説します。これらの注意点を事前に理解し、リスクを回避しましょう。
友人紹介の依頼が、社員の負担・プレッシャーになる
リファラル採用の協力を強く求めすぎるあまり、社員が「友人を紹介しなければならない」というプレッシャーを感じてしまうケースです。これでは、エンゲージメントを高めるどころか、かえって社員の負担になってしまいます。リファラル採用は、あくまで社員の自発的な協力をベースにした制度であることを忘れないようにしましょう。協力は強制ではなく、あくまで「お願い」ベースであることを伝え続ける姿勢が大切です。
不採用時の人間関係トラブル
紹介した友人が不採用になった場合に、紹介者と友人の人間関係が悪化してしまうリスクです。これを防ぐためには、制度設計の段階で、選考プロセスと結果の伝え方を丁寧に行うルールを決めておくことが不可欠です。紹介してくれた社員への配慮を忘れないようにしましょう。
制度が形骸化し、誰も紹介してくれない
制度を導入したものの、最初の数ヶ月だけで、その後は全く紹介が生まれずに形骸化してしまうケースです。この原因の多くは、継続的な周知や魅力的なインセンティブ、紹介しやすい仕組みが不足していることにあります。リファラル採用は、一度作って終わりの制度ではありません。定期的なアナウンスや成功事例の共有、インセンティブの見直しなど、制度を「動かし続ける」ための継続的な働きかけが、成功と失敗の分かれ道となります。
まとめ:リファラル採用を、最強の採用チャネルに
本記事では、リファラル採用のメリットから、具体的な成功事例、そして自社で成功させるためのポイントまでを網羅的に解説しました。最後に、リファラル採用を実施するメリットと運用ポイントを振り返りましょう。
- コストを抑え、カルチャーフィットする人材の採用と定着に繋げることが期待できる。
- 社員が協力しやすい報酬やツールの「仕組み」を整えることが成功の鍵。
- 経営層を巻き込み、全社で取り組む文化を醸成することが不可欠。
リファラル採用は、企業の知名度や予算に左右されず、社員との信頼関係という「資産」を活かせる強力な採用戦略です。ぜひ本記事で紹介した事例やポイントを参考に、貴社ならではの制度を構築し、未来の仲間探しを成功させてください。