採用のミスマッチとは?よくある発生原因や具体的な対策方法を紹介

人事担当者をはじめ、企業にとって大きなデメリットをもたらしかねないものが採用のミスマッチです。新卒・中途にかかわらず、採用ミスマッチが発生することで、採用活動に費やした時間やコストが無駄になるケースも少なくありません。採用のミスマッチは入社後に発覚することが多くありますが、事前に防ぐ方法はないのでしょうか。

今回は採用ミスマッチによる影響をはじめ、ミスマッチが生じる原因や対策方法を詳しく解説します。本記事を参考に採用のプロセスや手法を最適化し、企業・応募者の双方にとってベストマッチとなる採用活動を実現しましょう。

採用ミスマッチとは?

採用ミスマッチとは、企業が採用した人材と期待する能力や働き方が一致しない状態を指します。もちろん、新入社員が入社後にギャップを感じることは少なくありません。しかし、ギャップを感じるポイントやその度合いによっては、早期離職や採用コストの増加につながる可能性もあります。

採用のミスマッチを防ぐことは、優秀な人材の定着率を向上させるだけでなく、企業の成長につながる一因となるため、企業や人事担当者は十分に対策をしておくことが重要です。

採用ミスマッチに悩む企業は少なくない

株式会社PRIZMAが行った「求職者と人事採用担当者に関する調査」では、企業の人事・採用担当者の87%が採用ミスマッチにより社員が早期離職した経験を持っていることがわかりました。

また、新卒・中途で入社した人も、会社や業務内容に関して入社後にギャップを感じた人が66.3%に上り、企業

採用ミスマッチによる影響

採用ミスマッチが生じた結果、企業にどのようなデメリットをもたらすのでしょうか。ここでは採用ミスマッチによる影響を3つ紹介します。

離職率の上昇

新入社員が抱いていたイメージと、実際の社内の雰囲気や業務内容などにギャップがあると、離職率の上昇につながる恐れがあります。新入社員が「思っていた仕事内容と違う」「企業文化に馴染めない」と感じるケースは多く見られ、場合によっては配置転換が必要になったり早期離職されたりすることも珍しくありません。

実際に、厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、新卒が就職後3年以内に離職する割合が32.3%という結果が出ています。早期離職によって採用活動に費やした時間・コストが無駄になる可能性があるほか、事業計画にも影響を及ぼしかねないでしょう。

また、離職率が高いままでは企業のブランドイメージが低下する可能性も考えられます。今後の採用活動で母集団形成が難しくなったり、取引先からの印象が悪くなったりするかもしれません。

採用コストの増加

採用のミスマッチにより新入社員が早期離職すると、採用活動に費やしたコストが無駄になったり、採用コストが増加したりする可能性があります。

例えば、就活みらい研究所が発表した「就職白書2020」によると、新卒採用にかかったコストの平均は1人あたり93.6万円で、中途採用の場合は103.3万円という調査結果が出ています。入社後の在籍期間によっては、新入社員の人件費や研修費などがかかってしまうでしょう。

また、早期離職されたために再び採用活動を行うことになると、採用コストはさらに膨らんでしまいます。場合によっては事業計画を練り直す必要性が生じることもあるため、採用ミスマッチによる早期離職は企業にさまざまな損失をもたらすことになるでしょう。

従業員のモチベーション低下

採用のミスマッチは、新入社員のモチベーション低下につながる恐れがあります。配属先が応募者の希望する部署ではなかったり、業務適性がない人材を採用してしまったりすると、想定していたほどの活躍ができないケースも少なくありません。

また、採用ミスマッチによる新入社員の離職は、ほかの社員にも悪影響をもたらす可能性があります。例えば、退職者の業務をほかの社員が分担して進めなければならない状況だと、既存社員の業務量が増えてしまい、精神的にも大きな負担となってしまうかもしれません。

このほかにも、入社・退社の頻度が多い状態が続くと、社内で「人が定着しない会社」という印象を持たれる可能性があります。それにより、従業員のモチベーションが低下するだけでなく、離職の連鎖につながることも考えられるでしょう。

採用ミスマッチの主な原因5つ

採用ミスマッチは企業にさまざまな損失をもたらすリスクを孕んでいますが、なぜ求職者と企業の間で認識のズレが生じてしまうのでしょうか。ここでは、採用ミスマッチの主な原因を5つ紹介します。

すでに採用ミスマッチによる早期離職を経験している場合は、自社に当てはまるものがないか確認してみてください。

1.求める人物像との不一致

企業の求めるスキル・能力が求職者と一致しないと、採用ミスマッチにつながる可能性があります。求める人物像との不一致にはいくつか要因が考えられ、企業側で要件設定を曖昧にしているケースや、求職者が実力以上のことを伝えたり嘘をついたりしているケースもあるでしょう。

求職者に必要なスキル・能力が備わっているかどうかは、選考で入念に見極める必要があります。ただ、企業側で求める人物像が曖昧だと、選考時に採用基準がブレてしまい、採用ミスマッチから早期退職につながる可能性があるため、人材の見極め方には注意が必要です。

2.適切な選考手法をとれていない

書類選考や筆記試験、面接などの選考を行って採用するかどうかを決める企業がほとんどですが、適切な選考手法をとれていないと採用ミスマッチにつながる可能性があります。

例えば、求職者のスキルや適性を見極めるために適性検査を行う企業は少なくないでしょう。しかし、適性検査を実施しなかったり、検査結果を軽視していたりすると、採用判断が主観的になってしまうかもしれません。また、面接官によって面接の方法や評価基準が異なる場合も、採用ミスマッチの要因になることがあります。

そこで、業務に必要な能力が不足している人材や、企業文化に馴染めない人材を採用してしまうリスクを回避するためにも、企業は自社に合った選考手法を検討する必要があります。

3.求職者とのコミュニケーション不足

採用プロセスのなかで、候補者に企業の情報を十分に伝えられていないと、採用ミスマッチにつながる場合があります。特に採用活動では、応募者を集めるために自社の良い面をアピールする企業は少なくないでしょう。しかし、休日出勤の有無や残業時間の長さといった実情を伝えていないと、新入社員が入社後にミスマッチを感じるかもしれません。

応募者に好印象を持ってもらうためにネガティブな情報は避けたいかもしれませんが、良い面だけでなく課題も伝えることが重要です。仮にマイナスの面があったとしても、改善のために取り組んでいることを伝えられれば、応募者にネガティブな印象を持たれることはないでしょう。

4.企業イメージと現実の乖離

求職者は求人情報や説明会などの情報をもとに企業イメージを持ちますが、入社後にイメージと現実のギャップを感じることも珍しくありません。想像していたよりもプラスの印象を抱く分には問題ありませんが、「期待はずれ」「事前情報は嘘だったの?」とマイナスのギャップを感じてしまう場合は注意が必要です。

例えば、説明会で「フレキシブルな働き方を推奨しています」と伝えている一方で、社内では長時間労働が常態化している場合は、新入社員の不満や不信感につながる可能性があります。このほか、社内の雰囲気や給与、手当、働きやすさなどが事前説明と食い違っている場合は、採用ミスマッチにつながる可能性があることを把握しておきましょう。

5.採用プロセスの短期的な効率化

採用活動の期間は企業によって異なりますが、採用プロセスを短縮したりスピード重視で選考を進めたりしている場合は注意が必要です。面接回数を減らしたり採用基準を緩めたりすれば採用活動を効率化できますが、応募者の適性やスキルを十分に評価できない可能性もあり、ミスマッチのリスクが高まることにつながります。

ただ、近年は人材獲得競争が激化しており、新卒採用においては早期化の傾向が強まっています。迅速な内定出しによって内定辞退を避ける考え方もありますが、採用ミスマッチから早期離職につながってしまっては意味がありません。そのため、採用ミスマッチを防ぐためには企業にとって最適な採用スピードを検討することが重要です。

採用ミスマッチを未然に防ぐ5つの対策方法

採用ミスマッチの原因は企業ごとに異なり、場合によっては複数の要因がかかわっていることもあります。先述した主な原因に当てはまるものがあれば、ここで紹介する対策方法を実施してみてください。

1.求める人物像の明確化

採用ミスマッチを防ぐためにも、自社の求める人物像を明確にしておきましょう。求める人物像とは、自社が理想とする人材の特徴・資質を具体的にまとめたものです。人物像が具体的になることで、採用したい人材の方向性が定まったり、自社の風土に合った人材を採用しやすくなったりするため、採用ミスマッチの防止につながります。

また採用プロセスのなかでは、採用担当者や面接官ごとに異なる評価基準のズレを最小限に抑えられ、応募者に対しては公平な選考を実施することが可能です。

求める人物像を設定する場合は、学歴や資格などの「ハード面」と、性格や価値観といった「ソフト面」をバランスよく組み合わせることが重要です。詳細な進め方については以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2.面接官マニュアルの作成

求める人物像の明確化とあわせて、面接官マニュアルを作成しましょう。面接官マニュアルとは、自社の採用・評価基準や面接時のルール、質問内容をまとめた資料のことです。

面接官は人事担当者だけでなく現場社員や役員が務めることが多くありますが、面接官マニュアルを活用することで面接の平準化が図れるほか、マッチ度の高い人材を採用できる可能性を高められます。例えば、「仕事への考え方」や「職業適性」といった評価項目別に質問案をまとめておけば、求める人物像に合致する人材を採用しやすくなるでしょう。

また、面接官の役割や姿勢・心得をマニュアルに記載しておけば、応募者が面接官・企業にマイナスの印象を抱いたり選考辞退したりするリスクを低減できるのも嬉しいポイントです。

面接官マニュアルの作り方や活用方法については、以下の記事を参考にしてみてください。

3.適性検査の導入

採用選考の一環として適性検査を導入・実施するのも、採用ミスマッチ防止につながります。かつては新卒採用で適性検査を行うことが多くありましたが、近年は新卒・中途にかかわらず適性検査を実施するケースも少なくありません。

例えば、適性検査で有名なSPIであれば、能力検査と性格検査が主な検査内容です。新卒採用の場合は、性格検査を通じて学生の性格や行動特性、キャリア志向など、自社にマッチするポテンシャルがあるかどうかを客観的に確かめられます。また、中途採用の場合は即戦力であることが重視される傾向にあるため、能力検査で業務に必要な能力が備わっているかを確かめることが可能です。

ただ、適性検査はSPI以外にも玉手箱や内田クレペリン検査などさまざまな種類があり、それぞれ受検方法や検査結果が異なります。適性検査を選ぶ際は、候補者の足切りや合否の最終判断といった目的を明確にしたうえで、検査内容が選考に活かせるかどうかを検討しましょう。

4.適切な情報提供

求職者や応募者にはできるだけ適切な情報提供を行うことが肝心です。というのも、事前に知らされていなかったことが入社後になって発覚すると、新入社員にミスマッチと捉えられる可能性があるためです。面接は応募者と企業が互いにマッチするかどうかをすり合わせる場なので、企業は自社の良い面だけでなく悪い面も伝えましょう。

また、悪い面については伝え方次第でネガティブな印象を持たれることはありません。例えば、「現在は人手不足の影響で業務負担が偏りがちですが、入社後にはその課題を解消するために業務フローの見直しやチーム体制の強化に一緒に取り組んでほしい」のように、一緒に取り組む姿勢を見せれば応募者の意欲を引き出せるでしょう。

このほか、入社後の流れや担当業務、ノルマなどを詳細に伝えておくことで、応募者は認識の齟齬がない状態で選考に臨むことができ、入社後にミスマッチを感じるリスクを抑えられます。

5.リアルな企業情報の発信

業務内容や福利厚生、職場環境などは面接中に口頭で伝えられるものの、応募者が実際の雰囲気や社員の人柄などを確かめるのは難しいものです。そのため、企業の良い面・悪い面や業務内容などのほかに、企業のリアルな情報を発信することも検討してみてください。

近年はオウンドメディアやSNSなどを通じて手軽に情報発信できるので、社員インタビューの内容を動画や記事として掲載してみても良いでしょう。また、インターンシップや職場見学の機会を設けて、現場社員との交流を図るのもおすすめです。選考では聞きづらいことも気軽に相談でき、社員との交流を通じて入社後の具体的なイメージを持てるようになるため、採用後のミスマッチ防止につながります。

6.採用計画の見直し

スピード重視で採用プロセスを短縮していたり、応募者の見極めが十分にできていなかったりするために採用のミスマッチが生じている場合は、採用計画を見直しましょう。

採用計画を見直す際は、採用課題の把握や採用目標の明確化、人材要件の定義、採用チャネルの選定などを整理することが重要です。そのうえで、求人媒体への掲載から入社までの採用スケジュールを組み立てれば、採用ミスマッチの防止や優秀な人材の獲得にもつながるでしょう。

なお、新卒と中途では応募者に求める要件や採用活動の期間の長さなどが異なるため、採用計画はそれぞれ分けて考えるのがおすすめです。以下の記事では採用計画書の作り方について詳しくまとめているので、あわせて確認してみてください。

採用後に実施すべき3つの施策

ここまで採用活動中に行うべきミスマッチ防止策を紹介しましたが、採用が決まってからもできることはあります。ここでは、特に実施してもらいたい施策を3つまとめているので、ぜひ実践してみてください。

1.研修の実施・強化

新入社員のなかには、「職場に馴染めるだろうか」と不安を抱えている人も少なくありません。そこで、まずは新入社員を対象にした研修の実施あるいは強化を検討しましょう。特に、企業文化や業務内容への理解を深められるコンテンツを充実させれば、勤労意欲や帰属意識の向上につながり、採用ミスマッチを防ぎやすくなります。

また、将来的に職場や労働環境の改善を図る場合は、研修やオリエンテーションなどの場で伝えてみても良いでしょう。新入社員にポジティブな印象を持ってもらえるため、採用ミスマッチの防止だけでなく離職率の低下も期待できます。

2.定期面談の実施

新入社員に対して事前に企業情報を伝えていたとしても、入社後に不安や悩みを抱えるケースは珍しくありません。そのため、新入社員の入社後は定期的に面談を行うのがおすすめです。新入社員が仕事へのやる気をなくしている場合には、面談で一緒に目標を設定することでモチベーションを向上させられるかもしれません。

また、新入社員のなかには誤解してギャップやミスマッチを感じている人もいます。例えば、事前に残業が少ないと伝えていたものの、イレギュラーな事態が重なったために残業が増えてしまうこともあるでしょう。こうした誤解を解いたり認識をすり合わせたりするためにも、定期面談などを通じて新入社員のフォロー体制を整えることが大切です。

3.メンター制度の導入

先輩社員が新入社員をサポートする「メンター制度」を導入するのも一つの手です。先ほどの定期面談と似ていますが、定期面談が業務面を中心にサポートするのに対して、メンター制度は主にメンタル面をサポートします。

新卒は入社後すぐに覚えることが多く、業務や人間関係などに不安を抱えている人も少なくありません。誰にも相談できず一人で抱え込んでしまうと、ミスマッチがなくとも早期離職してしまう可能性もあるでしょう。そこで、メンター制度を導入して気軽に相談できる環境を整えれば、ミスマッチの解消や離職率の低下などが期待できます。

ただし、先輩社員の負担が増えるだけでなく、メンターとの組み合わせが悪いと新入社員のストレスになることもあります。そのため、先輩社員には業務上のフォロー、新入社員にはメンターとの相性を考慮しましょう。

採用ミスマッチには現状に合わせた対策を講じよう!

採用のミスマッチは、企業だけでなく応募者や社員にマイナスの影響をもたらす可能性があるため、選考中や入社前に対策を講じておくことが重要です。特に適性検査を実施して客観的な評価を下したり、面接マニュアルを活用して平準化された面接を実施したりと、選考の時点で自社の求める人材かどうかを見分けましょう。

採用ミスマッチを防ぐためには現状を的確に把握し、改善していくことが肝心です。企業と人材のマッチ度を改善したい場合は、ぜひ本記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。