
新卒採用における面接は、企業と学生がお互いを理解し合うための重要な機会です。特に、面接官が適切な質問をすることで、履歴書やエントリーシートだけでは見えない学生の個性や能力、ポテンシャルを引き出すことができます。
しかし、「どのような質問をすれば学生の本音を引き出せるのか」「自社に合った人材を見極めるにはどうすれば良いのか」と悩む採用担当者の方もいるのではないでしょうか。この記事では、面接の目的から具体的な質問例、効果的な質問をするためのポイント、そして避けるべきNG行動までを網羅的に解説します。
新卒採用面接における質問の主な目的
新卒採用面接における質問の主な目的は、以下の3点が挙げられます。
人物像を深く理解する
履歴書やエントリーシートに書かれた情報だけでは分からない、学生の個性、価値観、考え方、強み・弱みなどを質問を通して深く理解することが重要です。これにより、自社の社風や求める人物像とのマッチング度合いを見極めることができます。
能力や適性を評価する
学生がこれまでに経験してきた学業、アルバイト、サークル活動、などについて質問することで、問題解決能力、コミュニケーション能力、主体性、協調性などの能力が分かります。これにより、自社でどのように活躍しそうかイメージすることができます。
入社意欲や将来性を確認する
なぜ自社を志望したのか、入社後にどのような仕事に挑戦したいのか、将来どのようなキャリアを築きたいのかといった質問を通して、学生の入社意欲・ポテンシャルの高さを確認できます。
中途採用とは異なり、職務経験がないためポテンシャルがあるかどうかの判別は重要です。育成や研修に時間がかかるからこそ、将来の幹部候補生となるような人材を見極めるために、面接での質問が重要な判断軸となります。
面接の流れと質問の種類
新卒採用の面接は、一般的に以下のような流れで進められます。
それぞれの段階で適切な質問をすることで、より効果的に応募者を評価することができます。
- アイスブレイク: 面接の冒頭で、学生の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作るための簡単な質問を行います。
- 自己紹介・自己PR: 学生に自身の強みや経験、スキルなどを簡潔に説明してもらいます。
- 志望動機: なぜその企業を選んだのか、どのような点に魅力を感じているのかを質問します。
- 経験・実績: 学生が過去に経験した具体的なエピソードについて質問し、その過程での行動や成果、学びなどを深掘りします。
- 能力・適性: 仕事に必要な能力や適性を測るための質問を行います。
- キャリアプラン: 入社後のキャリアプランや、将来の目標について質問します。
- 逆質問: 学生から企業に対して質問する機会を設けます。
- クロージング: 面接の結果や今後の流れについて説明します。
これらの流れの中で、面接官は様々な種類の質問を使い分けます。
例えば、事実確認のための「はい/いいえ」で答えられるクローズクエスチョン、具体的なエピソードを語ってもらうためのオープンクエスチョン、学生の思考力を試すための状況設定型の質問などがあります。
新卒採用の面接で使える基本的な質問集
ここでは、新卒採用の面接で実際に使える基本的な質問例を、目的別に紹介します。
新卒採用面接の「アイスブレイク」に使える質問例
面接の冒頭は、学生が緊張していることが多いものです。
まずは簡単な質問で場を和ませ、リラックスした雰囲気を作りましょう。
- 本日はお越しいただきありがとうございます。道に迷いませんでしたか?
- 大学生活はいかがですか?最近何か熱中していることはありますか?
- 今日の天気は良いですね。どちらからいらっしゃいましたか?
- 何か趣味はありますか?最近熱中していることはありますか?
- 緊張していますか?リラックスしてくださいね。
新卒採用面接の「自己PR」に関する質問
自己PRに関する質問は、学生の強みや個性を把握し、自社でどのように活躍してくれる可能性があるかを見極めるために重要です。
- あなたの強みは何ですか?具体的なエピソードを交えて教えてください。
- あなたの弱みは何ですか?どのように克服しようと努力していますか?
- 周りの人からはどのような人だと言われることが多いですか?
- 学生時代に最も力を入れたことは何ですか?そこから何を学びましたか?
- 他の人に負けないと思うことは何ですか?
新卒採用面接の「志望動機」に関する質問
志望動機に関する質問は、学生がなぜその企業を選んだのか、どれくらいの熱意を持っているのかを確認するために不可欠です。
- 当社を志望した理由は何ですか?
- 当社のどのような点に魅力を感じていますか?
- 入社後、どのような仕事に挑戦したいですか?
- 当社で働くことで、どのような成長を期待していますか?
- 当社の企業理念やビジョンについて、どのように考えていますか?
新卒採用面接の「経験・実績」に関する質問
職務経験のない新卒採用において、「経験・実績」に関する質問は、学生がこれまでの学生生活でどのように考え、行動してきたのか、その過程でどのような成果を上げてきたのかを知るために非常に重要です。
具体的なエピソードを通して、学生の行動力や問題解決能力、目標達成意欲などを探りましょう。
- 学生時代に最も主体的に取り組んだ経験は何ですか?その経験から何を学びましたか?
- チームで目標を達成した経験について教えてください。
- これまでの経験の中で、目標を達成するために困難を乗り越えた経験があれば教えてください。
- アルバイトやサークル活動などで、何か成果を出した経験はありますか?
新卒採用面接の「能力・適性」に関する質問
キャラクターに関する質問は、学生の人柄や性格、価値観などを理解するために行います。
自分の性格を客観的にどう捉えているのか、第三者からどのように捉えられているのか、両方の視点で見ることが大切です。
- あなたはどのような性格ですか?
- ストレスを感じた時、どのように解消しますか?
- 周囲からはどのような人だと言われることが多いですか?
- チームの中でどのような役割を果たすことが多いですか?
- 尊敬する人物は誰ですか?その理由も教えてください。
新卒採用面接の「仕事観やキャリアプラン」に関する質問例
仕事観に関する質問は、学生が仕事に対してどのような考えを持っているのか、どのような働き方を理想としているのかを知るために重要です。
仕事観は人によってさまざまあるため、自社の雰囲気や理念に合っているかどうかのすり合わせができます。
- どのような時に仕事にやりがいを感じますか?
- 仕事をする上で大切にしたいことは何ですか?
- どのような働き方をしたいですか?(例:チームワークを重視したい、個人で黙々と作業したいなど)
- 将来、どのようなビジネスパーソンになりたいですか?
- キャリアアップについてどのように考えていますか?
新卒採用面接の「逆境力」に関する質問
社会人になると、予期せぬ困難や壁にぶつかることも少なくありません。逆境に関する質問を通して、学生が困難な状況にどのように対応し、乗り越えようとするかを見極めます。
適性検査の「ストレス耐性」も似た傾向が読み取れるため、面接前に確認しておくのも良いでしょう。
- これまでの人生で、最も困難だった出来事は何ですか?どのように乗り越えましたか?
- 失敗経験について教えてください。そこから何を学びましたか?
- プレッシャーを感じる状況で、どのようにパフォーマンスを発揮しますか?
- 目標を達成するために、壁にぶつかった経験はありますか?どのように打破しましたか?
- 予期せぬトラブルが発生した場合、どのように対応しますか?
新卒採用面接の「対人スキル・人間性」に関する質問例
社会人として働く上で、周囲との良好なコミュニケーションは不可欠です。対人スキルや人間性に関する質問を通して、学生が円滑な人間関係を築けるかを見極めます。
- チームで活動する際に、あなたはどのような役割を担うことが多いですか?
- 意見が対立した際、どのように解決しようとしますか?
- 初対面の人とコミュニケーションを取ることは得意ですか?
- 相手の立場になって考えることができますか?具体的なエピソードを教えてください。
- 周囲の人を巻き込みながら、何かを成し遂げた経験はありますか?
ここでは、必ずしも対人スキルが優れている人を良しとするのではなく、「課題を持っていることを認識していて、今後改善していきたい」という回答であれば、今後のポテンシャルに期待できます。
この場合は「改善に向けてどんなことをしていますか?」というように、さらに深堀りしていきましょう。逆境力や弱みを問う質問と繋がるかもしれません。
新卒採用面接の「クロージング」に関する質問
面接の最終段階である「クロージング」は、単に面接を終わらせるための時間ではありません。学生の入社意欲を最終確認し、疑問や不安を解消することで、内定承諾へと繋げるための重要な機会です。
- 面接全体を通して、最も印象に残ったことは何ですか?
- 当社に対する印象や志望度について、何か変化はありましたか?
- 今後の選考結果のご連絡は〇日頃を予定しておりますが、それまでの間に何か不安なことや疑問点はありますか?
- 他にご選考を受けている企業はありますか?もしあれば、選考状況と当社への志望度合いを教えてください。
- 最後に、もし何か伝え足りないことや、聞きたいことがあればぜひ教えてください。
クロージング質問の際に、企業側から今後の選考スケジュールや結果について明確に伝えることで、学生に安心感を与えることができます。効果的なクロージングの質問を通じて、双方にとって納得のいく形で面接を締めくくりましょう。
新卒採用面接で就活生の本音を引き出すポイント
面接で学生の本音を引き出すためには、質問の内容だけでなく、質問の仕方や面接官の態度も重要です。
本音を引き出すポイントについて、下記参考にしてみてください。
学生が話しやすい雰囲気作りをする
面接は、学生にとって非常に緊張する場です。面接官は笑顔で迎え、丁寧な言葉遣いを心がけるなど、学生が安心して話せるような雰囲気作りを意識しましょう。特に最初のアイスブレイクの際の雰囲気作り・質問が重要です。
質問の意図・聞き方を面接官に共有する
複数の面接官が関わる場合、それぞれの面接官が質問の意図や聞き方を理解しておくことが重要です。事前に面接官同士で情報を共有し、共通認識を持つことで、評価のばらつきを防ぎ、一貫性のある面接を行うことができます。
一貫性のある面接や、評価基準を揃えるためには「採用基準」の設定が必要です。下記記事で設定方法やメリットについて解説しているため、ぜひ合わせてご覧ください。
▼採用基準について:「採用基準」の重要性とは?具体的な設定方法とメリットを解説!
共通の質問文を用意する
すべての応募者に対して、いくつかの基本的な質問は共通のものを用意しておくことで、応募者間の比較がしやすくなります。ただし、共通の質問だけでなく、個々の応募者の特性に合わせて深掘りする質問も用意しておきましょう。
面接官のNG行動とは?
面接官の言動は、応募者の企業に対する印象を大きく左右します。
ここでは、面接官が避けるべきNG行動を3つのポイントに絞って解説します。
面接中にしてはいけない質問を把握しておく
応募者のプライベートな情報(家族構成、宗教、思想信条など)に関わる質問や、差別につながるような質問は避けなければなりません。また、学生の尊厳を傷つけるような高圧的な態度や、一方的な質問攻めもNGです。
企業のイメージ・信頼度が下がり、翌年以降の母集団形成にも大きく影響する可能性があります。
面接官の態度や言動に気を遣う
面接官の態度や言動は、そのまま企業のイメージとして応募者に伝わります。横柄な態度や、学生の話を真剣に聞かないといった対応は、企業の印象を大きく損なう可能性があります。応募者一人ひとりに敬意を払い、誠実な対応を心がけましょう。
第一印象や経歴に惑わされずに公平な評価をする
学歴や過去のアルバイト経験などの第一印象に惑わされず、質問を通して得られた情報に基づいて、公平な評価をすることが重要です。先入観を持たずに、学生の個性やポテンシャルをしっかりと見極めましょう。
まとめ
この記事では、新卒採用の面接で活用できる効果的な質問例と、学生の本音を引き出すためのポイントをご紹介しました。
新卒採用の面接における質問は、優秀な人材を見抜くために重要な判断軸となります。面接官は、それぞれの質問の意図を理解し、学生が話しやすい雰囲気を作ることを心がけましょう。学生の回答を注意深く聞き、深掘りすることで、表面的な情報だけでなく、その奥にある本音や個性、能力を引き出すことができます。
これらの情報を参考に、貴社の面接を成功に導き、優秀な人材の獲得に繋げてください!