
新卒採用において、スキルや経験よりも人柄を重視する企業は少なくありません。なぜなら、人柄を重視することで社風に合った人材に出会える確率が上がったり、定着の期待も高まったりするためです。
しかし、人柄重視の採用にはデメリットもあります。本記事では人柄重視の採用のメリット・デメリット、採用活動におけるポイントやおすすめ手法・方法を紹介しているので、それぞれ確認していきましょう。
人柄を重視する採用とは
人柄を重視する採用とは、経験やスキルより、人となりや価値観を重視する採用活動のことです。この採用活動は「人柄重視採用」や「人柄採用」とも呼ばれ、とくに新卒採用においてはポピュラーな採用活動といえます。
人柄を重視する採用を行う企業がエントリーシートや面接でチェックするべき主な項目は、以下の通りです。
・意欲
・素直さ
・真面目さ
・コミュニケーション能力
・協調性
・主体性
・礼儀やビジネスマナー
・ストレス耐性
・将来性
中途採用では即戦力となる経験やスキルのある人物が重宝されがちですが、新卒者は経験やスキルと呼べるものを持っていません。そのため新卒採用では経験やスキルではなく、意欲や素直さといった人柄を重視した採用活動が主流となっています。
ちなみに、人柄重視採用と似た言葉に「ポテンシャル採用」がありますが、ポテンシャル採用は今後の可能性や潜在的な能力を重視した採用活動です。人柄重視採用でも将来性は考慮されますが、人柄重視採用はより性格に重きを置いた採用活動と定義できるでしょう。
新卒採用で人柄を重視する企業は多い
新卒採用の採用基準にはさまざまな項目がありますが、企業規模や地域にかかわらず、多くの企業が就活生の人柄を重視していることがわかります。
就職みらい研究所の『就職白書2024』データ集によると、自社への熱意や今後の可能性を大きく引き離し、調査協力をしたすべての企業が就活生の人柄を重視していることがわかりました。
参考:就職みらい研究所 | 『就職白書2024』データ集 P136
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2024/02/hakusho2024_data.pdf
新卒採用において人柄を重視するメリット
多くの企業が人柄を重視した採用を実施していることがわかりましたが、新卒採用において人柄を重視することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、新卒採用で就活生の人柄を重視するメリットを3つ紹介します。
採用のミスマッチを防止できる
新卒採用で人柄を重視する大きなメリットは、採用のミスマッチを避けられることです。採用のミスマッチが起こると、新入社員の早期離職のリスクが高まり、企業にとっても新入社員にとっても大きな痛手となってしまいます。
採用のミスマッチを防止するには、採用基準の見直しが重要です。経験やスキルよりも人柄を重視した採用活動を行うことで、自社に合う就活生を採用できます。自社の人間関係や労働環境に適した人材を採用できれば、早期離職のリスクを最小限に抑えられ、社員の定着率も向上するでしょう。
母集団を形成しやすい
経験やスキルを重視した採用活動を行うと、条件を満たした就活生を集めるのに苦労します。その点、人柄を重視する採用なら応募者を経験やスキルで絞らないため、多くの人材を集めることが可能です。
新卒採用において、母集団の形成は欠かせません。採用活動における母集団とは、自社に興味を持っている就活生の集まりのことです。母集団を形成するには、応募のハードルを下げる必要があります。経験やスキルではなく、人柄を重視していることアピールすることで、より多くの就活生に興味を持ってもらえるでしょう。
組織のコミュニケーションが円滑になる
人柄を重視して採用した新入社員が入社すると、組織のコミュニケーションが円滑になります。企業という組織に所属する以上、コミュニケーション能力は必要な要素です。人柄を重視する採用でコミュニケーション能力や協調性、礼儀などの項目を把握しておけば、入社後に良好な人間関係を築いてくれるでしょう。
入社後の悩みとしてよく挙げられるのは、人間関係にまつわるストレスです。一緒に働く上司や同僚と気が合わず、離職を考える社員も少なくありません。人柄を重視する採用では自社に合う人材を選んで採用するので、人間関係に悩まず働いてもらいやすくなります。その結果、組織のスムーズなコミュニケーションを実現でき、生産性の向上や組織全体の成長を目指すことも可能です。
新卒採用において人柄を重視するデメリット
新卒採用で人柄を重視することには、メリットだけでなくデメリットもあります。人柄重視採用の導入を検討している場合は、あらかじめデメリットも把握しておきましょう。
見極めが難しい
人柄を重視する採用のデメリットは、見極めが難しいことです。例えば、面接で就活生が企業に合わせて演技をしている場合、面接担当者によっては見抜けない可能性も少なくありません。
新卒採用の面接は、2~3回が基本です。わずか2~3回で就活生の人柄を把握し、自社に合うかどうか判断するのは容易ではありません。その場で上手く取り繕われてしまうと、誤った評価を下してしまう可能性もあります。人柄を重視する採用を行う場合は、面接担当者の研修を実施したり、新卒採用のスキルに長けた担当者を選んだりする必要があるでしょう。また、面接の方法や質問内容にも工夫が必要です。それらのポイントについては、次の章で詳しく解説します。
認知バイアスの影響を受けやすい
認知バイアスとは、無意識の思い込みや先入観、偏見などの要因によって非合理的な判断をしてしまう心理現象を指します。例えば、「高学歴の就活生は優秀である」「ここまで採用コストをかけたのだから採用するべきだ」といった偏った考え方も認知バイアスの一種です。
採用活動は採否の判断が担当者に一任されるため、認知バイアスが働きやすくなる傾向にあります。担当者の主観に任せてしまうと評価が偏りがちになり、「○○のような就活生は人柄がいいはずだ」と拡大解釈してしまう恐れもあるでしょう。認知バイアスそのものが悪いわけではありませんが、人柄を重視した採用を行う場合はバイアスのかかった見方をしないように注意しなければなりません。
新卒採用において認知バイアスに陥らず、正常な判断を下すには、評価基準を明確にすることや、他者の意見を聞き入れることが大切です。また、特定の社員のみ面接を担当するのではなく、複数人で評価する体制を整える必要があります。
教育コストがかさむ可能性がある
人柄を重視した採用のデメリットの一つとして、教育コストがかさむことが挙げられます。人柄を重視するということは、経験やスキルの優先度を下げるということです。業務に関して一から教育する必要があるため、社員教育や研修に関するコストがかさんでしまうことは避けられないでしょう。
とはいえ、新卒採用を行うのであれば教育コストは必要経費です。人柄を重視しない場合でも新入社員向けの研修や教育は必要なので、大きなデメリットだと捉える必要はないでしょう。
人柄重視の新卒採用活動を行う際のポイント
ここからは、人柄を重視した新卒採用を行う際のポイントを5つ紹介します。効率と効果を両立した新卒採用活動を成功させるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
求める人物像を明確にする
新卒採用活動を始める前に、求める人物像を明確にすることが重要です。どのような人材を求めているのか、どういった人柄を重視するのかを具体的にすることで、自社に合う人材を引き寄せられます。
求める人物像を明確にするには、企業のブランドイメージや目標とする成果など、さまざまな要素を分析したり、言語化したりしなければなりません。また、入社後に活躍している社員の特徴を洗い出し、共通点や行動特性を分析してみるのもおすすめです。
どのような人材を求めているかが明確になっていない場合、採用のミスマッチが生じやすくなります。採用のミスマッチは早期離職のリスクを高めたり、社員の定着率の低下を招いたりする恐れがあるので、採用活動を始める前に求める人物像を策定しましょう。
構造化面接を実施する
構造化面接とは、あらかじめ質問や評価基準を設定しておき、その項目や基準、手順に沿って行う面接手法のことです。面接担当者の主観を排除できるので、認知バイアスの悪い影響を受けることなく、客観的な評価が可能になります。
構造化面接のメリットは、経験と勘に頼らない採用活動を実現できることです。担当者が変わったところで評価基準は変わらないので、評価の妥当性が高く、採用のミスマッチを抑えられます。ただし、就活生の新たな魅力を発見したり、回答の嘘や矛盾を見破ったりすることは困難になるので、半構造化面接として面接の後半に自由に質問する場を設ける企業も少なくありません。
構造化面接には、代表的な2つのパターンがあります。1つ目は、就活生の過去の行動について質問する「STAR面接」です。STARとはSituation(状況)・Task(課題)・Action(行動)・Result(結果)の頭文字を取ったもので、就活生が起こした行動から人柄を判断します。
2つ目は、仮説に基づいて質問する「状況設定型面接」です。状況設定型面接は「もし○○の状況に陥ったら」という仮説に基づいた質問に答えてもらうことで、就活生の問題解決能力を把握します。構造化面接を行う場合は、自社に合うパターンを選びましょう。
なお、構造化面接の導入を検討している場合は、面接官マニュアルを作成するのがおすすめです。面接時の質問事項や面接官の心得などをまとめることで、面接の平準化や質を高められます。以下の記事で紹介しているので、詳しく知りたい方が参考にしてみてください。
オープンクエスチョンを用意する
オープンクエスチョンとは、就活生に自由に回答してもらう質問のことです。「はい」「いいえ」で回答するクローズドクエスチョンの対義語にあたり、就活生の人柄や価値観を把握しやすくなります。
オープンクエスチョンは就活生の魅力を発見しやすく、会話が弾みやすいことが特長です。また、回答の組み立て方から論理的思考力も判断できます。一方で、クローズドクエスチョンはテンポよく質疑応答が進むものの、一方的な会話になってしまいがちです。人柄を重視する採用を行う場合は、数種類のオープンクエスチョンを用意することをおすすめします。
以下にオープンクエスチョンの質問例を挙げたので、ぜひ参考にしてみてください。
・弊社のどのような点を魅力に感じましたか?
・部活動やアルバイトなどで、どのような役割を担っていましたか?
・入社後、社員と意見の食い違いが生じたときにどのように解決しますか?
・過去の挫折経験を教えてください。また、どのように乗り越えましたか?
・あなたが最もストレスを感じる状況を教えてください。
グループディスカッションを行う
人柄を重視した新卒採用活動を行うなら、グループディスカッションの実施がおすすめです。グループディスカッションは他者とのかかわり方を把握できる貴重な面接手法であり、エントリーシートや個人面接だけでは見極められない要素を判断できます。
グループディスカッションでは就活生がどのポジションにつき、どのような発言をするか、どういった気の配り方をしているかを細かくチェックしましょう。自己中心的な議論をしていないか、他者の意見を頭ごなしに否定していないかなど、あらかじめチェック項目を設けておくのもおすすめです。
グループディスカッションの人数は、一人ひとりをしっかりと評価するために4~6人以下を基本としましょう。また、就活生の発言の差を極力減らすために、知識量が鍵となるテーマ選びは避けるべきです。
傾聴の姿勢を心がける
経験やスキルを重視する採用は評価基準が明確であり、わかりやすい採用活動といえます。それに対して、人柄を重視する採用はわかりにくく、就活生も何を評価されているかわからず混乱しがちです。就活生を不安にさせず、より多くの情報を引き出すためにも、就活生に強い関心を持っていることを示しましょう。
面接担当者が傾聴の姿勢を心がければ、会話が弾みやすくなり、就活生の人柄が見えてきます。面接という場で取り繕った面だけでなく、本来の性格や思考回路を把握するために、話を聞く姿勢にはこだわりたいところです。
人柄重視の新卒採用おすすめ手法・方法4選
ここからは、新卒採用で人柄を重視する場合におすすめの採用手法・方法を紹介します。どの採用手法・方法も就活生の人柄が見えやすく、採用のミスマッチ防止に役立つため、積極的に取り入れてみてください。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社で働いている社員におすすめの人材を紹介してもらう採用手法のことです。すでに自社で働いている社員が推薦するということは、自社に合う人材である可能性が高く、信頼性も高くなります。そして何より、就活生の人柄を事前に把握できるので、採用プロセスを簡略できることがメリットです。
さらに、求人媒体や人材紹介の事業者を経由しないため、採用コストを大幅に削減できます。リファラル採用を導入している企業の多くは、おすすめの人材を紹介してくれた社員にインセンティブを支払いますが、それを差し引いてもかなりのコスト削減となるでしょう。
SNS採用
SNS採用とは、文字通りInstagramやX、TikTokなどのSNSを駆使して行う採用手法です。「ソーシャルリクルーティング」とも呼ばれ、自分に魅力を感じてくれた企業で働きたいと考える就活生から支持されています。
SNSの投稿には就活生の人柄や価値観がダイレクトに反映されているため、SNS採用は人柄を重視した新卒採用として効果的な手法の一つです。気になる就活生にDMを送ってスカウトしたり、コメントしたりと気軽につながれる点も魅力でしょう。また、SNS採用は入社後に問題行動を起こしそうな就活生を避けるという意味でも役立ちます。
採用ミートアップ
採用ミートアップとは、企業に興味を持った就活生を集めて行う交流会のことです。採用活動の一環として行われ、基本的には10〜20名程度の小規模での開催となります。
一口に採用ミートアップといっても、軽食をとりながら行う座談会形式のカジュアルな形式もあれば、会社説明会のような形式もあり、形式はさまざまです。どの形式であっても、企業の魅力や特徴を就活生に直接伝えられるので、採用活動にかける予算や時間がある場合は積極的に取り入れたい手法といえます。より手軽さを重視する場合は、オンラインでの実施もおすすめです。
なお、採用ミートアップは母集団の形成にも役立ちます。より多くの就活生に自社を知ってもらいたい、顕在層だけでなく潜在層にもアプローチしたいと考えている企業は、ぜひ採用ミートアップを開催してみましょう。
適性検査(性格診断)
適性検査のなかでも、性格診断は人柄を重視した新卒採用をサポートする役割を担います。性格診断は就活生の性格や行動特性などを確かめる検査であり、エントリーシートや面接では把握しきれない情報を得ることが可能です。
また、性格診断の結果は配属先を決定する際の判断材料にもなるため、選考の段階で能力検査とあわせて実施しておくことをおすすめします。なお、性格診断にはSPIや玉手箱、内田クレペリン検査などさまざまな種類があり、質問項目や検査時間はさまざまです。性格診断の導入を検討している企業は、自社に合うものを選びましょう。
人柄重視の新卒採用活動はキミスカがおすすめ
新卒採用では、多くの企業が就活生の経験やスキルより人柄を重視する傾向にあります。人柄を重視した採用活動を行うことで、採用のミスマッチを防止できたり、母集団を形成しやすくなったりするためです。また、人柄を重視することで先輩社員との摩擦も生まれにくく、組織のコミュニケーションも円滑になるでしょう。
とはいえ、人柄を重視した採用は見極めが難しく、認知バイアスによる偏った判断が下されやすくなるデメリットがあります。こうしたデメリットを軽減するためにも、構造化面接やオープンクエスチョンを活用し、正当な評価を心がけたいところです。
また、新卒採用では手法・方法にもこだわる必要があります。キミスカなら就活生のプロフィールや写真はもちろん、適性検査の結果を把握したうえでアプローチできるので、人柄を重視した新卒採用が可能です。さらに、キミスカは1社につき専任のカスタマーサクセス1人が担当させていただく安心のサポート体制を提供しています。キミスカへのお問い合わせは、こちらのページをご確認ください。