新卒採用の選考では、ES(エントリーシート)や履歴書に自己PRに関する項目が設けられていることは珍しくなく、さらには面接の場でも自己PRを話すことがあります。自己PRでは、学生時代に力を入れたことや趣味、特技などを伝えても問題ありませんが、効果的な伝え方をしなければ、面接官に好印象を残すことは難しいでしょう。
この記事では、自己PRと自己紹介の違いをはじめ、書類選考と面接それぞれの伝え方や注意点をご紹介します。
新卒が知っておくべき「自己PR」「自己紹介」の違い
自己紹介は基本的に面接の場で話すものですが、企業によってはESや履歴書とは別に「自己紹介書」の提出を求めてくる可能性があります。自己PRと自己紹介に同じことを書くと、あなたの魅力を伝えきれないため、まずはそれぞれの違いを押さえておきましょう。
新卒が知っておくべき自己紹介とは
自己紹介で大切なのは、自分のプロフィールを簡潔に伝えることです。面接では自己紹介をしてから質疑応答が始まるケースがほとんどなので、面接官に深掘りしてもらいたいことを伝えるきっかけと捉えておきましょう。自己紹介で伝える主な内容は、大学・学部・氏名といった基本的な情報をはじめ、ガクチカなど。面接では「自己紹介を1分でしてください」と時間制限がある場合も多いため、端的にまとめることも重要なポイントです。
自己紹介は面接で尋ねられることが多くありますが、企業の中には書類審査の際に「自己紹介書」の提出を求めてくる場合もあります。提出書類の中に自己PRの欄がなければ、自己紹介書にアピールしたいことを書いても問題ありません。自己PRとの差別化を図るために、自身の得意分野や実務経験などを記載しても良いでしょう。
新卒が知っておくべき自己PRとは
新卒採用を行っている企業の大半が尋ねる自己PR。ESや履歴書に自己PRの記入欄が設けられているだけでなく、面接の時に聞かれることも多くあります。学生の基本的な情報をまとめた自己紹介に対して、自己PRで伝えるのは自身がアピールしたい経験や能力などです。そして、面接官は自己PRを通じて、以下に挙げたようなポイントを見ています。
・就活生が学生時代に注力したこと
・学生の入社意欲
・会社に貢献してくれる人材かどうか
・社風に合った人材かどうか
もしもESと履歴書の両方に自己PRの欄が設けられており、どちらも同じ内容を書く場合は、記入欄が小さい方に端的にまとめた文章を記載しましょう。また、どちらも書ける文字数が同じ程度であれば、それぞれ別のアピール文を書くのもおすすめです。
新卒の自己PRは例文を参考にしよう!
いきなり自己PRの文章を書こうと思っても、何を書けば良いのか、どうやってまとめれば良いのか分からない学生もいるでしょう。
就活では自分らしさが重要なポイントですが、どうすれば伝えたいことをまとめられるのか、以下の例文を参考にしてみてください。
私は、一度やると決めたことは最後までやり遂げる力があります。そう実感したきっかけは、大学での部活動です。私は野球へ入部しましたが、あまり実績のない部活で大会で賞をとった経歴もありません。しかし3年生になった私がキャプテンになってからは、なんとしても結果を出そうと考え、一人ひとりのレベルアップとチームビルディングに力を入れ、練習メニューを一から考え直しました。結果として最後の大会でベスト4に入り、初めて賞状をもらうことができました。私はこの経験を活かして、貴社でも目標に向かって努力を続け、結果を出し続けたいと思っています。
このほか、自己PRの例文はこちらの記事で紹介しています。長所別に35の例文をまとめているので、自己PR作成に悩んでいる方は参考にしてみてください。
【新卒の自己PR攻略】ES・履歴書の書き方
面接官の印象に残る自己PRを作るためにも、まずは効果的な伝え方をマスターしましょう。ここで紹介するPREP法は、「結論・理由・具体例・結論」の順に伝える方法です。社会人になってからも役立つテクニックなので、今のうちに身につけておきましょう。
【新卒向け自己PRの書き方1】書き始めは結論から
自己PRの書き始めは、まず結論から述べましょう。最初の結論として「何をアピールしたいのか」を書くことで、どういった内容なのかが伝わりやすくなります。
・私はどんな環境でもリーダーシップを発揮できます。
・私には物事を計画的に進め、最後まで遂行する力があります。
・私の強みは物事を柔軟に捉えて行動できる対応力です。
このように自己PRの冒頭は、自分が持っている強みやアピールしたいポイントを一言で述べましょう。
【新卒向け自己PRの書き方2】エピソードを盛り込む
続いて、結論に思い至った理由を記載しましょう。「なぜそう考えるようになったのか」をエピソード付きで説明することで、説得力のある文章に仕上げられます。
大学3年にボランティアサークルの代表となり、リーダーシップを身につけることができました。私が代表となるまでは、ミーティング参加率が全体の3割程度で、実際のボランティア活動でも参加人数や規模が減少傾向にありました。そこで、私が代表となってからは、サークルのメンバー一人ひとりと面談する時間を設け、不満に思っていることやサークルで実現したいことなどをヒアリングしました。さらに副代表と連携してサークルの活動内容を見直したことで、メンバーの帰属意識やモチベーションが高まり、ミーティング参加率は8割を超え、ボランティ活動は過去最多の人数で行うことができました。
理由とエピソードを書く際に重要なのは、できるだけ具体的に書くことです。上記の例のように数字を記載すれば、面接官も具体的なイメージを持つことができます。このほか、周りの人から言われた言葉などを盛り込むのもおすすめです。
【新卒向け自己PRの書き方3】締めは企業への貢献
最後の結論では、どのようにして自分の強みやアピールポイントを企業に活かすのかを記載しましょう。
現状の問題点だけでなく一人ひとりと向き合い、一つの目標を達成するリーダーシップを貴社でも活かしていきたいと考えております。
この経験で培われたコミュニケーション能力を活かし、数多くのお客様を満足させるコンサルタントとして貴社で活躍したいと考えております。
締めの文章では、企業に貢献することを必ず記載しましょう。自分の強みをただ説明するだけでは、自社で活躍できる人材かどうかの判断が難しくなるかもしれません。また、企業目線での話を展開することで、企業への理解度や関心が伝わるため、効果的な自己PRに必須の要素と言えます。
【新卒の自己PR攻略】履歴書・書類選考の注意点
自己PRの内容を履歴書やESに書く際は、企業ごとに合わせたアピールポイントを盛り込むなど、注意すべき点があります。実際に書き進める前に、それぞれの注意点を把握しておきましょう。
【新卒が自己PRを書く時の注意点1】企業に合わせた内容にする
たとえ同じ業界であったとしても、企業ごとに求める人物像が異なります。そのため、企業がどのような人材を探しているのか、企業研究を通じで判断しましょう。企業に合わせた自己PRを考えるのは簡単なことではありません。しかし、自分がアピールしたいことを効果的に伝えれば、面接官にあなたの魅力を理解してもらえるでしょう。
【新卒が自己PRを書く時の注意点2】丁寧に書く
手書きで自己PRを記載する場合は、丁寧に書くように心がけましょう。単純に綺麗な文字を書くだけでなく、以下のポイントに注意してください。
・文字のガタつき
・文章の傾き
・誤字脱字
丁寧に書くためにも、最初は鉛筆やシャープペンシルで薄く下書きをし、黒のボールペンで清書しても良いでしょう。また、修正するために修正液や修正テープなどはNGです。正式な書類なので、間違えたときは最初から書き直しましょう。
【新卒が自己PRを書く時の注意点3】文字数制限を意識
自己PRで大事なのは、伝えたいことをまとめることです。どれだけアピールしたいことがあっても、情報量が多すぎると伝わりにくくなってしまいます。
また、自己PRの欄は記載できる文字数に限りがあるため、アピールポイントを1つに絞るようにしましょう。ただし、自己PRの記入欄に大きな空白があると、人事から「熱意がないのかな?」と思われる可能性もあるので、記入欄の8割以上を目安に埋めることも重要です。
【新卒が自己PRを書く時の注意点4】読みやすい工夫も
空白をあまり残さず丁寧に書くことが望ましいですが、記入欄いっぱいに自己PRが書かれてあっても読みづらくなってしまいます。
・重要なポイントを太字にする
・伝えたいところにアンダーライン(下線)を引く
・段落ごとに改行する
こうした工夫で読みやすさを改善すれば、書類選考の時点で人事に好印象を残せるかもしれません。ただし、アンダーラインや太字などを多用すると読みづらさにつながるため、1~2ヶ所程度にとどめておきましょう。
【新卒の自己PR攻略】面接で話す際のポイント
自己PRを効果的に伝えるコツは、書類選考と面接のそれぞれで異なります。面接の場では、質疑応答の内容だけでなく、一緒に働きたい人物かどうか、人間性やマナーなどが見られていることも把握しておきましょう。
【新卒向け自己PRの話し方1】結論から話し始める
結論から伝えるPREP法は、相手が理解しやすく説得力のある伝え方ができるテクニックです。そのため、面接の場合でも自己PRは結論から話すことをおすすめします。書類選考で提出した内容を話しても問題ありませんが、面接の場ではよりも詳しいエピソードなどを盛り込んでも良いでしょう。
【新卒向け自己PRの話し方2】自分の言葉で伝える
ESや履歴書と同じ内容を面接で話しても構いませんが、暗記してそのまま話すのはおすすめできません。基本的に面接では自己PRを話すタイミングがあるため、履歴書やESに書いた内容をベースに口頭で伝える練習をしておきましょう。
なお、自己PRを話す練習をする際は基本的な流れを把握し、重要なポイントとなるキーワードを覚えておくと、スムーズに話すことができます。以下の記事でも詳しく解説しているので、面接対策の参考にしてみてください。
【新卒向け自己PRの話し方3】表情や抑揚を意識
文面で伝えるのとは違い、口頭で伝える面接では表情を変えたり、抑揚をつけて話したりするのも効果的です。笑顔と明るい声で伝えれば、相手にポジティブな印象を持ってもらいやすくなります。
このほか、話の中で強調したいポイントなどがあれば声を大きくするなど、何度も練習して伝え方にこだわりましょう。
【新卒の自己PR攻略】面接での注意点
続いて、面接で自己PRを話す際に注意してほしいポイントを紹介します。
【新卒が自己PRを話す際の注意点1】深掘りの質問をされる
面接では、就活生が自己PRを話し終わった際に追加の質問をする場合が多くあります。自己PRの内容をベースに質問されることが多いため、深掘りの質問が来ることを前提に面接対策を講じておきましょう。深掘りの質問への対策は、自己分析を深めておくことが近道です。自分の考えや価値観を言語化し、あなたらしい回答を心がけましょう。
キミスカでは自己分析に使える適性検査ツールを無料で提供しています。自分についての理解を深めたい方は、ぜひ活用してみてください。
【新卒が自己PRを話す際の注意点2】制限時間がある
多くの面接では制限時間が設けられているため、話が長くなりすぎないように注意しなければなりません。面接官が気になったポイントは深掘りの質問で尋ねられるため、時間指定がない場合は1分ほどを目安に話すと良いでしょう。なお、1分間で話せる文字数は300文字程度なので、事前に練習する際の目安にしてみてください。
ガクチカや自己PRを1分で話すためのコツは、こちらの記事でも詳しく解説しています。
【新卒が自己PRを話す際の注意点3】言葉遣いに気をつける
面接の場では言葉遣いにも注意が必要です。学生がよく間違えるものとしては、「貴社・御社」などが代表例でしょう。どちらも企業のことを指していますが、書類に書く場合は「貴社」、口頭で話す場合は「御社」と正しく使い分けることも大切です。
このほか、尊敬語や敬語、謙譲語などの使い分けも見られているので、以下の記事を参考に言葉遣いをマスターしておきましょう。
【新卒が自己PRを話す際の注意点4】1文を簡潔にまとめる
話が長くなってしまうことはもちろん、一文が長いと相手に伝わりづらくなってしまいます。記載する場合も同様ですが、60〜70文字程度を目安に一文を区切りましょう。
端的に話すことができれば、面接官から「論理的に話す力や要点をまとめる力がある」と判断される可能性もあります。
【新卒が自己PRを話す際の注意点5】専門用語は使わない
自己PRを面接で話す場合、専門用語の使用はなるべく控えましょう。もちろん志望する業界で一般的な言葉であれば通じる可能性もありますが、専門用語や学術用語は伝わらない可能性があります。
また専門用語を伝えるために語句の説明をすると、アピールの時間が少なくなってしまうので注意が必要です。
自己PRに関する新卒のよくある疑問
最後に、自己PRについて学生がよく悩むポイントをQ&A形式でご紹介します。
【新卒の自己PRに関するQ&A1】自己PRの見つけ方は?
自身の経験や実績、強みなどを伝える自己PRは、自己分析を行うことで可視化できます。ESを作成する前に自己分析や性格診断ツールなどを活用し、自身の強みや経験を具体的に把握しておきましょう。
【新卒の自己PRに関するQ&A2】書いたものと別のことを話してもいい?
自己PRで話す内容は、書類選考で提出したものと被っても問題ありません。また、別の内容を話しても構いませんが、書いた内容と話す内容が矛盾しないよう、一貫性を大事にしてください。
【新卒の自己PRに関するQ&A3】追加の質問は何がくる?
面接時に投げかけられる質問は、頻出のものはあっても絶対に聞かれるというわけではありません。どんな質問が来ても自分らしく答えられるよう、自己PR作成の時に自分の考えもまとめておきましょう。
なお、面接での質問例は以下の記事で詳しく紹介しています。面接対策に臨む新卒の方はぜひ参考にしてみてください。
新卒の就活生は自己PRが魅力を伝えるチャンス!
自己紹介とは違い、自己PRは学生が企業に貢献できる強みや魅力を伝えられる絶好の機会です。就活では自己PRを尋ねられることが多くあるため、入念に準備したうえで書類選考や面接に臨みましょう。
ただし、伝え方のコツや注意点を把握しないまま選考を進めると、「マナーがなっていない」「うちの会社には合わないかも」と思われる可能性があります。ぜひこの記事で紹介した内容を参考に、魅力あふれる自己PRを作ってみてください。