【例文付き】銀行への志望動機が思いつかない?考え方から書き方まで徹底ガイド

銀行への漠然とした憧れはあるけれど、「なぜ御行なのか?」と聞かれたら答えに詰まってしまう…そんな経験はありませんか?銀行の志望動機は、あなたの熱意と可能性を示す重要なアピールですが、書き方が分からず悩むのは当然です。

この記事では、自己分析や企業研究に基づいた説得力のある志望動機の作り方を、具体的なステップで徹底解説します。メガバンクや地方銀行など種類別の例文も豊富に紹介するので、これを読めば、あなたの経験や想いを効果的に言語化し、自信を持って「銀行で働きたい理由」を語れるようになるでしょう。まずは志望動機を考える前に知っておきたいことから解説していきます。それではいきましょう。

銀行の志望動機が重要な理由とは?

就職活動において、エントリーシートや面接で必ず問われる「志望動機」。特に銀行を志望する場合、なぜこの項目がこれほどまでに重要視されるのでしょうか? それは、多くの企業、とりわけ顧客からの高い信頼性が求められる銀行にとって、採用選考における極めて重要な評価ポイントだからです。採用担当者は、学歴やアルバイト経験といった情報だけでは分からない、あなたの個性や仕事への価値観を知りたいと考えています。

企業側は、単に能力やスキルがあるかだけでなく、「なぜ数ある企業の中からうちの銀行を選んだのか」「入社して何を成し遂げたいのか」という、学生一人ひとりの熱意や価値観、そして企業との相性を深く知りたいと考えているからです。 志望動機を通して、あなたがどれだけ真剣にその銀行で働くことを望んでいるか、企業理念や事業内容を深く理解しているか、そして入社後にどのように活躍・貢献してくれる可能性があるのかを慎重に見極めています。

また、入社後のミスマッチを防ぎ、長く活躍してもらうためにも、志望動機の一貫性や具体性は重視されます。あなたにとっても、志望動機を突き詰めることは自己分析と企業研究の成果を示す絶好の機会であり、他の学生との差別化を図る強力な武器となります。説得力のある志望動機は、あなたの熱意とポテンシャルを採用担当者に強く印象付けるでしょう。

銀行の志望動機作成前に知るべきこと

納得感のある銀行の志望動機を作成するには、まず業界や企業に関する基本的な知識を深めることが不可欠です。銀行業界を取り巻く環境や、それぞれの銀行が持つ特徴、そして具体的な仕事内容を理解しておくことで、なぜ銀行で働きたいのか、なぜその銀行を選んだのかを明確に説明できるようになります。ここからの解説を読んで、志望動機作成の土台を固めていきましょう。

1. 銀行業界の現状と将来性

現在の銀行業界は、マイナス金利政策の長期化やデジタル化の波(FinTech)、異業種からの参入など、銀行業界は大きな変革期を迎えています。

これまでの預金や貸出を中心としたビジネスモデルだけでなく、AIやビッグデータを活用した新しい金融サービスの開発や、顧客である企業の課題解決に向けたコンサルティング業務の重要性が増しています。この変化に対応し、社会や顧客に対して新たな価値を提供していく姿勢が、これからの銀行員には求められるでしょう。

2. 銀行の種類とそれぞれの特徴

一口に銀行と言っても、メガバンク、地方銀行、信託銀行、信用金庫・信用組合など、様々な種類が存在します。それぞれ規模や主な取引先、提供しているサービス内容、地域社会における役割などが異なります。

例えば、全国・海外に広範なネットワークを持つメガバンクと、地域経済の活性化に貢献する地方銀行や信用金庫では、求められる役割も変わってきます。それぞれの銀行が持つ役割や特徴、得意とする分野を理解することは、「なぜその銀行でなければならないのか」という志望理由を明確にする上で欠かせません。

メガバンク

メガバンクとは、一般的に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3つの巨大銀行グループを指します。国内だけでなく海外にも広範なネットワークを持ち、大企業やグローバル企業を主な取引先として、多様な金融サービスを提供している点が大きな特徴です。

銀行業務だけでなく、グループ内で信託、証券、リース、カードなどの機能も持ち合わせており、国内外の大規模なプロジェクトファイナンスやM&Aに関わる機会もあります。グローバルな視点や幅広い業務に挑戦したい人に向いているでしょう。

地方銀行

地方銀行は、各都道府県などの特定の地域に本店を置き、その地域を中心に営業活動を行う銀行です。その名の通り、特定の地域に根ざし、地元の中小企業や個人顧客を主な対象として、地域経済の活性化に貢献する役割を担っています。

顧客との距離が近く、長期的な信頼関係を築きながら、地域の実情に合わせたきめ細やかな金融サービスを提供できるのが魅力です。地元に貢献したい、地域社会を元気にしたいという想いを持つ人にとって、やりがいを感じられる職場と言えるでしょう。近年は経営基盤強化のため、再編の動きも活発です。

信託銀行

信託銀行は、預金や貸出といった通常の銀行業務に加えて、「信託業務」と呼ばれる、顧客の財産(お金、不動産、有価証券など)を預かり、管理・運用する専門的なサービスを提供しています。具体的には、遺言信託、年金信託、不動産の仲介・管理、企業の株主名簿管理(証券代行業務)など、非常に幅広い分野を手掛けています。

通常の銀行よりも、より専門性の高い知識やコンサルティング能力が求められるのが特徴です。資産運用や相続、不動産などに興味がある人に向いています。

信用金庫・信用組合

信用金庫や信用組合は、地域で暮らす人々や中小企業がお互いに助け合う「相互扶助」の理念に基づいた、協同組織の非営利的な金融機関である点が、株式会社である銀行との大きな違いです。営業地域が限定されており、主にその地域の中小企業や個人を組合員(会員)として、預金や融資などの金融サービスを提供しています。

利益を追求するだけでなく、地域社会の発展に貢献することを重視しており、地方銀行以上に地域に密着した活動を行っています。地域貢献への意識が特に高い人に向いているでしょう。

3. 銀行の主な仕事内容

銀行の仕事は多岐にわたりますが、大きく分けて法人向け、個人向け、そして銀行全体の運営に関わる業務があります。顧客と直接関わる営業部門から、銀行全体を支える本部部門まで、様々な役割が存在します。自分がどの分野で専門性を高め、どのように銀行や社会に貢献していきたいのかを考えることが、志望動機を具体化する上で重要になります。

以下で代表的な仕事内容を見ていきましょう。自分に合った職種を見つける参考にしてください。

法人営業

法人営業は、企業の経営者や財務担当者と向き合い、融資の提案だけでなく、事業承継、M&A、海外進出支援など、企業の成長や課題解決に向けた様々なソリューションを提供する仕事です。担当する企業の業界動向や財務状況を深く理解し、経営課題を把握した上で、最適な金融サービスや情報を提供します。まさに企業の「かかりつけ医」のような存在と言えるでしょう。

経済や金融に関する幅広い知識はもちろん、高いコミュニケーション能力や課題解決能力が求められます。企業の成長を間近で支えたい人におすすめです。

個人営業(リテール)

個人営業は「リテール営業」とも呼ばれ、個人の顧客を対象に、資産形成やライフプランに関する相談に応じ、預金、投資信託、保険、各種ローン(住宅、自動車、教育など)といった金融商品やサービスを提供する仕事です。顧客一人ひとりの状況やニーズを丁寧にヒアリングし、最適な提案を行うことが求められます。

人生の大きな節目に関わることも多く、顧客と長期的な信頼関係を築きながら、その人生設計をサポートできる点にやりがいがあります。金融知識に加え、親身になって相談に乗る姿勢やコミュニケーション能力が重要です。

窓口業務(テラー)

窓口業務は「テラー」とも呼ばれ、銀行の支店の窓口で、来店されたお客様の様々な手続き(預金の入出金、振込、税金や公共料金の支払い、口座開設など)に対応する、まさに銀行の「顔」となる仕事です。お金を正確かつ迅速に取り扱う事務処理能力はもちろんのこと、お客様に安心感を与える丁寧な言葉遣いや明るい笑顔といった接客スキルが非常に重要になります。

また、お客様のニーズに応じて適切な金融商品やサービスを案内することもあります。人と接することが好きで、正確な作業が得意な人に向いています。

本部業務(企画・審査・国際など)

本部業務は、銀行全体の戦略立案や商品開発、リスク管理、システム開発、人事、広報など、銀行という組織を円滑に運営し、支えていくための様々な専門業務を担っています。例えば、融資案件の可否を判断する「審査部」、金融市場で資金運用を行う「市場部門」、海外拠点との連携や貿易金融を扱う「国際部門」など、その内容は非常に多岐にわたります。

多くの場合、営業などの現場経験を積んだ後、専門性を高めるために配属されます。特定の分野で専門知識を深めたい人にとって魅力的な部署が多いです。

銀行の志望動機で伝えるべき3つのこと

説得力のある銀行の志望動機を作成するためには、大きく分けて3つの要素を盛り込むことが重要です。それは「①なぜ銀行業界なのか」「②なぜその銀行なのか」「③入行後にどう貢献したいか」です。

この3つの問いに対する自分なりの答えを明確にすることで、具体的で熱意のこもった、説得力のある志志望動機を作成することができます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. なぜ金融業界、特に銀行なのか

まず、世の中に数多く存在する業界の中で、なぜ金融業界、そして特に銀行を選んだのかを明確に説明する必要があります。これは、あなたの業界への理解度や働くことへの本気度を確認するための質問です。

自身の経験や価値観と結びつけながら、銀行が社会で果たしている役割(例:経済の活性化、人々の生活支援)のどこに魅力を感じ、貢献したいと考えたのかを具体的に述べましょう。「安定していそうだから」といった漠然とした理由だけでは、他の業界でも良いのでは?と思われてしまう可能性が高いです。

2. なぜ他の銀行ではなく、その銀行なのか

次に、同業の銀行が多数存在する中で、なぜ他の銀行ではなく「その銀行」を志望するのか、明確な理由を伝える必要があります。これは、あなたの企業研究の深さと、その銀行に対する熱意の強さを測るための問いです。

その銀行ならではの強みや特徴、企業理念、力を入れている事業分野などを具体的に挙げ、自身の価値観や目標とどのように合致しているのかを説明することが重要です。どの銀行にも当てはまるような内容では、「うちじゃなくても良いのでは?」と採用担当者に思われてしまいます。

3. 入行後、どのように貢献したいか

最後に、入行したら具体的にどのような形で銀行に貢献していきたいのか、あなたの意欲と将来性を示す必要があります。採用担当者は、あなたが自社で活躍してくれる姿を具体的にイメージしたいと考えています。

自身の強みや学生時代に培った経験・スキルをどのように活かし、具体的にどのような仕事(職種や事業分野)で貢献していきたいのかを、将来のキャリアパスも見据えながら述べましょう。「学びたい」「成長したい」という受け身な姿勢だけでなく、主体的に銀行へ貢献していく意欲を示すことが大切です。

【ステップ別】銀行の志望動機の作り方

銀行の志望動機が重要であること、伝えるべき要素が分かったところで、次は実際に作成する手順を見ていきましょう。これから紹介する6つのステップに沿って進めることで、自信を持って提出できる、あなただけの志望動機が完成するはずです。焦らず一つ一つのステップを着実に進めていきましょう。

ステップ1. 自己分析で強みや価値観を明確にする

魅力的な志望動機を作るための最初のステップは、自分自身を深く理解すること、つまり自己分析です。過去の経験を振り返り、「何にやりがいを感じるか」「どんな時に力を発揮できるか」「将来どうなりたいか」などを深く掘り下げることで、志望動機の核となる自分の軸が見えてきます。

自分の強みや大切にしている価値観が明確になれば、それが銀行で働くことや、志望する銀行の企業文化とどう結びつくのかを考えやすくなります。

ステップ2. 企業研究で銀行ごとの特徴を掴む

自己分析で自分の軸が見えたら、次は志望する銀行について徹底的に調べる企業研究が不可欠です。銀行と一口に言っても、メガバンク、地方銀行、信託銀行など、それぞれに特徴や強み、企業文化が異なります。

企業のウェブサイトや説明会はもちろん、ニュースリリースや中期経営計画などを読み込み、その銀行が目指す方向性や独自の強み、企業文化を深く理解しましょう。他行との比較も行うことで、志望理由がより明確になります。

ステップ3. 伝えたい3つの要素を整理する

自己分析と企業研究が終わったら、いよいよ志望動機の内容を具体的に固めていきます。ここで重要になるのが、以前お伝えした「伝えるべき3つの要素」です。

自己分析で見つけた自分の強み・価値観と、企業研究で理解した銀行の特徴・方向性を結びつけ、「なぜ銀行業界なのか」「なぜこの銀行なのか」「どう貢献したいのか」の3点について、具体的なキーワードや根拠を整理します。この整理がしっかりできていれば、後の文章作成がスムーズに進みます。

ステップ4. PREP法を参考に文章を組み立てる

志望動機の内容が固まったら、次はそれを分かりやすい文章に組み立てていきます。おすすめの構成方法が「PREP法」です。PREP法(結論→理由→具体例→結論)というフレームワークに沿って構成することで、論理的で分かりやすく、採用担当者に伝わりやすい文章を作成することができます。

最初に最も伝えたい結論(志望理由)を述べ、次にその理由、理由を補強する具体的なエピソード、最後に改めて結論と入行への意欲を述べる流れを意識しましょう。

ステップ5. 具体的なエピソードを盛り込む

志望動機の骨組みができたら、内容に深みと説得力を持たせるために、具体的なエピソードを盛り込みましょう。自分の強みや考え方を裏付ける具体的なエピソード(部活動、アルバイト、学業などでの経験)を交えることで、志望動機に説得力とオリジナリティが生まれます。

「なぜそう考えるようになったのか」「なぜその強みが身についたのか」が伝わるような、あなた自身の体験に基づいたエピソードを選ぶことが重要です。ただし、長くなりすぎないよう簡潔にまとめましょう。

ステップ6. 第三者に添削してもらう

志望動機が一通り完成したら、必ず自分以外の第三者に読んでもらい、フィードバックをもらいましょう。自分では完璧だと思っていても、他の人が読むと分かりにくい点や改善点が見つかることはよくあります。客観的な意見をもらうことで、より完成度の高い志望動機に仕上げることができます。

大学のキャリアセンターの相談員、ゼミの先生、就職活動を終えた先輩など、信頼できる人に読んでもらい、チェックしてもらうことを強くおすすめします。

銀行の志望動機で人事が評価するポイント

採用担当者は、提出された志望動機から様々な要素を読み取り、評価しています。採用担当者は、志望動機の中から学生のポテンシャルや自社との相性を見極めようとしています。具体的にどのような点が評価されるのかを知っておくことで、より効果的なアピールが可能になります。主な評価ポイントを5つご紹介します。

熱意と志望度の高さ

採用担当者がまず見ているのは、「本当にうちの銀行で働きたいと思ってくれているか」という熱意と志望度の高さです。「この銀行で働きたい」という純粋で強い気持ちが、具体的で説得力のある言葉で表現されているかが重要です。

なぜ数ある銀行の中からその銀行を選んだのか、その銀行でなければならない理由が明確に示されていると、高い志望度を持っていると評価されます。自分の言葉で、正直な想いを伝えることを心がけましょう。

企業・事業内容への深い理解

その銀行についてどれだけ深く調べているかも、志望度の高さを測る重要な指標となります。その銀行がどのような理念を持ち、現在どのような事業に力を入れ、将来どこを目指しているのかを正確に理解していることが伝わるかがポイントです。

単に企業のウェブサイトに書かれている情報を繰り返すのではなく、独自の強みや最近の取り組み、他行との違いなどを具体的に述べ、それに対して自分がどう共感し、貢献したいかを明確に示せると高く評価されるでしょう。

自己分析との一貫性

志望動機の内容が、あなたがアピールする他の要素(自己PR、強み、学生時代の経験など)と一貫しているかも見られています。志望動機で語る内容が、自己PRや学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)などでアピールする自身の強みや価値観と、しっかりと結びついていることが重要です。

例えば、「チームで目標達成することにやりがいを感じる」という強みをアピールしているなら、志望動機でもチームワークを重視する銀行の社風に惹かれた、といった繋がりを示すと説得力が増します。

入行後の活躍イメージの具体性

採用担当者は、あなたが実際に入行した後、どのように活躍してくれるのかを具体的にイメージしたいと考えています。入行後、自身の強みやスキルをどのように活かし、どの分野でどのように活躍・貢献していきたいのかを具体的に示すことが求められます。

「〇〇の業務に携わり、自身の△△という強みを活かして××を実現したい」のように、具体的な職種や目標に触れることで、入社意欲の高さと将来性をアピールすることができます。

論理的で分かりやすい文章構成

志望動機の内容そのものだけでなく、それが分かりやすく論理的に構成されているかも評価の対象です。伝えたい内容が整理されており、結論ファーストで論理的に話が展開されているか、誰が読んでも理解しやすい表現で書かれているかが評価されます。

PREP法などを活用し、話の流れを意識して文章を組み立てましょう。一文を簡潔にしたり、接続詞を効果的に使ったりすることも有効です。誤字脱字がないかの確認も大切です。

これはNG!銀行の志望動機で避けるべきこと

魅力的な志望動機を作成する一方で、避けるべき表現や内容を知っておくことも同様に重要です。せっかくの志望動機も、内容や表現によってはかえってマイナス評価に繋がってしまうことがあります。ここでは、銀行の志望動機を作成する際に特に注意したいNGポイントを5つ解説します。

どの銀行にも当てはまる抽象的な内容

「地域経済に貢献したい」「金融の力で人々を支えたい」といった内容は立派ですが、それだけでは他の銀行や金融機関にも当てはまってしまいます。

なぜその銀行でなければならないのか、その銀行のどのような点に魅力を感じてそう考えるに至ったのか、具体的な理由やエピソードが伴わない抽象的な内容は、志望度が低いと判断されがちです。企業研究を深め、その銀行ならではの志望理由を見つけることが重要です。

「安定性」や「福利厚生」だけを理由にする

銀行に対して「安定している」「福利厚生が充実している」というイメージを持つ人は多いかもしれません。しかし、安定性や福利厚生といった待遇面を志望理由の中心に据えてしまうと、仕事そのものへの意欲や貢献意欲が低いと見なされる可能性が高いです。

もちろん、働く上で重要な要素ではありますが、志望動機ではあくまで「その銀行で何をしたいのか」「どう貢献したいのか」という仕事内容への前向きな意欲を中心に伝えるべきです。

企業の理念や事業内容の理解不足

志望する銀行の企業理念や事業戦略、最近の動向などを十分に理解せずに志望動機を作成すると、その浅さが露呈してしまいます。その銀行が大切にしている価値観や、現在力を入れている事業、今後の戦略などを理解していないと、的外れなアピールになったり、志望度が低いと判断されたりします。

企業のウェブサイトを隅々まで読み込むことはもちろん、ニュース記事や説明会などで最新の情報を収集し、自分なりに理解を深めた上で志望動機に反映させることが不可欠です。

受け身な姿勢や貢献意欲の欠如

銀行に入って様々なことを学びたい、成長したいと考えるのは自然なことです。しかし、「貴行で学びたい」「成長させてほしい」といった、受け身で依存的な姿勢ばかりを強調すると、主体的に仕事に取り組み、組織に貢献する意欲が低いと受け取られかねません。

企業は、自社の成長に貢献してくれる人材を求めています。学びたいという意欲を示す場合でも、「学んだことを活かして、将来的にこのように貢献したい」という能動的な視点を加えることが重要です。

ネガティブな転職理由のような表現

新卒採用の場において、過去の経験(アルバイトなどを含む)に対する不満や批判を述べるのは、たとえそれが銀行を志望するきっかけだとしても避けるべきです。「前のアルバイト先は〇〇が良くなかったから、△△な銀行で働きたい」といったネガティブな表現は、他責的で不満が多い人物という印象を与えかねません。

経験から学んだことをポジティブに捉え、それを活かして「銀行でこんなことがしたい」という前向きな動機として語るように心がけましょう。

【例文集】銀行の志望動機

ここまで銀行の志望動機の重要性、作成ステップ、評価ポイント、NG例などを解説してきました。ここからは、具体的な状況に合わせた志望動機の例文をいくつか紹介します。これらの例文はあくまで参考として、あなた自身の経験や言葉で、オリジナルの志望動機を作成するためのヒントを見つけてください。

1.メガバンクを目指す場合の例文

例文

私が貴行を志望する理由は、日本を代表する金融機関として国内外の経済活動を幅広く支え、多様なキャリアを通じて自己成長できる環境に魅力を感じるからです。大学のゼミで国際金融を学ぶ中で、貴行が持つ強固な海外ネットワークと、グローバル企業の課題解決に貢献している実績に感銘を受けました。特に、新興国におけるインフラプロジェクトへの積極的なファイナンス提供は、経済発展に貢献したいという私の想いと合致します。入行後は、法人営業部門で多様な業界の知識を吸収し、将来的には海外案件にも挑戦することで、貴行のグローバルな事業展開に貢献したいと考えています。

例文のように、メガバンクならではの事業規模やグローバルな展開、挑戦できる環境などに魅力を感じている点を、自身の経験や目標と結びつけて具体的に述べることがポイントです。

2.地方銀行を目指す場合の例文

例文

生まれ育った〇〇県の活性化に貢献したいという強い想いから、地域経済の発展を使命とされる貴行を志望します。学生時代に地域の商店街活性化イベントに参加した際、貴行が地元企業に親身に寄り添い、資金面だけでなく経営相談にも応じている姿を拝見し、地域にとって不可欠な存在だと実感しました。私も貴行の一員として、お客様一人ひとりの状況を深く理解し、最適な金融サービスを提供することで、地域の人々の暮らしや企業の成長を支えたいです。持ち前の傾聴力と粘り強さを活かし、信頼される銀行員を目指します。

例文のように、地域経済への貢献意欲や、顧客と長期的な信頼関係を築きたいという想いを、具体的なエピソードやその銀行の取り組みと絡めて述べると良いでしょう。

3.信用金庫・信用組合を目指す場合の例文

例文

貴金庫の「地域社会への貢献」と「相互扶助」という理念に深く共感し、志望いたしました。祖父が営む小さな町工場が、貴金庫からの融資と温かいアドバイスによって経営危機を乗り越えた経験から、利益追求だけでなく、地域の人々や中小企業に寄り添う金融機関の重要性を学びました。私も、お客様との対話を大切にし、一人ひとりの課題解決に貢献することで、この街の発展を支えたいと考えています。大学で培ったコミュニケーション能力を活かし、地域の方々から信頼され、気軽に相談してもらえる職員を目指します。

例文のように、信用金庫・信用組合ならではの「相互扶助」の精神や、地域社会への貢献を重視する姿勢に共感している点を具体的に示すことが大切です。

4.法人営業を志望する場合の例文

例文

企業の成長を金融面からダイナミックに支援できる法人営業職に魅力を感じ、貴行を志望します。経済学部での学びを通じて、企業の資金調達が経営戦略に与える影響の大きさを知り、企業のパートナーとして課題解決に貢献したいと考えるようになりました。特に貴行は、中堅・中小企業への支援に力を入れており、多様なソリューションを提供している点に魅力を感じています。学生時代のサークル活動で培った、目標達成に向け周囲を巻き込み課題を解決する力を活かし、お客様のニーズを的確に捉え、最適な提案を行うことで、企業の持続的な成長に貢献したいです。

例文のように、なぜ法人営業に興味を持ったのか、自身のどのような強みを活かして企業の成長に貢献したいのかを具体的に述べることが重要です。

5..個人営業を志望する場合の例文

例文

お客様一人ひとりの人生に深く関わり、夢や目標の実現をサポートできる個人営業職に魅力を感じ、貴行を志望いたします。接客のアルバイト経験を通じて、お客様の話を丁寧に聞き、ニーズを汲み取って提案することに喜びを感じてきました。特に、金融商品は人生設計に大きな影響を与えるため、専門知識を身につけ、お客様に最適な提案をすることで、長期的な信頼関係を築きたいと考えています。貴行の「お客様本位」の姿勢に共感しており、私も持ち前の傾聴力と共感力を活かし、お客様のライフプランに寄り添うパートナーとして貢献したいです。

例文のように、顧客一人ひとりに寄り添い、人生設計をサポートすることへのやりがいや、自身の強みをどのように活かせるかを具体的に示すと良いでしょう。

銀行の面接で志望動機を効果的に伝えるコツ

エントリーシートで練り上げた志望動機も、面接で上手く伝えられなければ意味がありません。面接では、ESに書いた内容をただ読み上げるのではなく、熱意や人柄が伝わるように話すことが重要になります。

ここでは、面接官にあなたの想いを効果的に伝えるための話し方のコツを4つご紹介します。

結論から簡潔に話す

面接で志望動機を話す際は、まず結論から簡潔に述べることを強く意識しましょう。「私が貴行を志望する最大の理由は〇〇です」のように、まず結論をはっきりと伝えることで、面接官はその後の話の意図を理解しやすくなります。

限られた時間の中で最も伝えたいことを効果的にアピールするためにも、PREP法の「P(Point/結論)」を意識した話し出しが重要です。その後に、理由や具体的なエピソードを続けて説明していきましょう。

熱意を込めてハキハキと話す

どんなに素晴らしい内容の志望動機でも、自信なさげにボソボソと話していては、面接官に熱意は伝わりません。自信を持って、自分の言葉で熱意を込めてハキハキと話すことで、志望動機の内容に説得力が増し、入社への強い意欲を伝えることができます。

適度な声の大きさや話すスピード、そして相手の目を見て話すこと、明るい表情などを心がけましょう。熱意のこもった話し方は、あなたのポジティブな人柄をアピールすることにも繋がります。

具体的なエピソードを交える

面接では、エントリーシートに書いた志望動機をさらに深掘りするチャンスです。志望理由や自身の強みを裏付ける具体的なエピソードを簡潔に交えることで、話にリアリティと深みが増し、面接官の印象に残りやすくなります。

「なぜそう考えるようになったのか」「その経験から何を学んだのか」など、ESでは文字数制限で伝えきれなかった背景や想いを補足すると、あなたの人物像がより鮮明に伝わるでしょう。ただし、話が冗長にならないよう要点を絞ることが大切です。

逆質問で意欲を示す

面接の終盤にある逆質問の時間も、志望度の高さをアピールする重要な機会です。面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれた際に、入社後の働き方やキャリアに関する前向きな質問をすることで、最後まで高い入社意欲を示すことができます。

例えば、「若手行員が活躍できるフィールドについて」や「貴行が今後注力していく分野について」など、企業研究に基づいた質問は好印象です。事前にいくつか質問を用意しておきましょう。

銀行の志望動機に関するよくある質問(Q&A)

最後に、銀行の志望動機に関して多くの就活生が疑問に思う点について、Q&A形式でお答えします。ここでは、銀行の志望動機を作成したり、面接で伝えたりする際によく聞かれる質問とその回答をまとめました。細かな疑問を解消して、自信を持って選考に臨みましょう。

Q1. 金融の知識がなくても大丈夫?

現時点で金融に関する専門知識が豊富である必要はありません。入行後の研修制度が充実している銀行がほとんどです。企業側も、学生に即戦力の知識を求めているわけではなく、ポテンシャルや学ぶ意欲を重視しています。

ただし、なぜ金融業界、特に銀行に興味を持ったのかを説明するためにも、新聞やニュースで業界の動向に関心を持ち、基本的な情報を学んでおく姿勢は大切です。入行後に積極的に学ぶ意欲を示すことも重要です。

Q2. 他の業界と迷っている場合は正直に言うべき?

面接の場で正直に「他の業界とも迷っています」と伝えてしまうと、志望度が低いと判断され、マイナス評価に繋がる可能性が高いです。就職活動では複数の業界を見ている学生が多いのは当然ですが、選考の場では、その企業への入社意欲を最大限にアピールすることが求められます。

他の業界の話はせず、「なぜこの銀行でなければならないのか」という熱意を、自信を持って伝えることに集中しましょう。

Q3. 御行?貴行?どちらを使えばいい?

エントリーシートなどの書き言葉では「貴行(きこう)」、面接などの話し言葉では「御行(おんこう)」を使うのが正しい使い分けです。これは銀行に限らず、企業全般に対して使われる敬称のルールです。

ちなみに、信用金庫の場合は書き言葉で「貴庫(きこ)」、話し言葉で「御庫(おんこ)」となります。基本的なビジネスマナーですので、混同しないように覚えておきましょう。もし面接で言い間違えても、落ち着いて訂正すれば問題ありません。

Q4. 志望動機書と面接で言う内容は同じでいい?

基本的な軸や結論は一貫している必要がありますが、面接ではESに書ききれなかったエピソードや熱意を加えて、より具体的に話すことを意識しましょう。ESの内容を丸暗記して読み上げるのではなく、自分の言葉で、表情や声のトーンも使って熱意を伝えることが面接では求められます。

面接官からの質問を想定し、ESの内容をさらに深掘りできるよう準備しておくと、よりスムーズに対応できるはずです。

自分だけの熱意ある銀行の志望動機を作成しよう

今回は、銀行の志望動機の重要性から、作成に必要な業界・企業理解、伝えるべき3つの要素、具体的な作成ステップ、評価されるポイントや避けるべきNG例、そして面接での効果的な伝え方まで、幅広く解説してきました。志望動機を練り上げるプロセスは、自己分析と企業研究を深め、自分自身の将来と向き合う貴重な機会です。簡単ではありませんが、時間をかけて丁寧に取り組む価値があります。

最も大切なのは、例文やテンプレートに頼りすぎることなく、あなた自身の経験や価値観に基づいた「自分だけの言葉」で、入社への熱意と貢献意欲を具体的に示すことです。この記事を参考に、自信を持ってあなただけの魅力的な志望動機を完成させ、就職活動に臨んでください。